顧客の心は変わりやすいもので、少しでも価格が安かったり、気に入った商品を見つけると他社にスイッチしてしまいます。これを防ぐためにポイントカードや回数券を発行している小売業や飲食店がありますが、受注生産形態で、ITを活用して既存顧客をつなぎ止めに成功している事例を紹介します。
T社は特殊印刷用紙を生産する地方の中小企業です。用途は包装・印刷・名刺など用途は広いですが、工程のほとんどが手作りで製作に二週間以上の時間がかかります。商品の種類が多く、大きさや厚み及び柄などを細かく指定してきますが、リピート顧客が中心です。市場は低迷が続き売上は低下傾向で、商売をたたむ同業者も出始めており、何かよい方法はないかと常々考えていました。
そんな矢先専門家から提案を受けたのが、御用聞きシステムです。
「納品した紙がなくなる前に、こちらから御用聞きをしてはどうか」というもので、コンピュータに顧客が、いつ、どんな商品を、どのくらい購入したかというデータを保管し、購入サイクルを自動計算させ、リストアップさせます。
例えば、9月、12月、3月に同じ枚数を購入している顧客の場合は、次の購入予定である9月の一ヶ月前の8月に顧客リストとして出力されます。営業マンはこの情報を見てそろそろ商品がなくなる頃ではありませんか、と電話をかけたり訪問したりして、早期の受注を促す動きを取るのです。
1万種もある商品を手作業で追うことは難しいので、顧客の購買経歴をもとに受注を予測するコンピュータシステムの構築を開始し、三ヵ月後にシステムの利用をスタートさせました。
本システムの導入後は、多少の波はあるものの売上は徐々に向上し、狙い通り御用聞きの利便性が顧客に評価され、リピート率は高くなっています。また先行受注することで、顧客が他社に流れることを防止し、社内の生産計画を立てやすくなるという効果も表れています。
もっとも、顧客が100%コンピュータのデータ通りに動いてくれる訳ではありません。しつこく電話をかければ逆に印象を悪くする可能性があります。営業マンはFAXを利用したり、雑談の中でさりげなく聞くなどの工夫をしています。
コンピュータはあくまで資料を提供する道具であり、それをどう営業に活かすかは人間の知恵次第、ということを心得てITを活用していることが成功のポイントです。
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