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No.226 JRSメール配信サービス(2019.02.25)

JRSメール配信サービス発行事務局

 

 

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今回は、「変わる日本の観光インフラ」シリーズの2回目です。

前回は、急増する外国人観光客に対する宿泊施設面での対応として「民泊」を取り上げました。

今回は、訪日外国人旅行者の困りごと第一位の言語対応について、どのような取組が行われているか、「変わる日本の観光インフラ/多言語対応力の向上」と題して、NPO真・食の安全・安心支援機構所属の中小企業診断士 村田茂雄氏に、解説していただきます。

 

 

 

 

 変わる日本の観光インフラ/多言語対応力の向上

 

 

 

1.多言語化への様々な取り組み

訪日外国人客が日本を旅行中に困ったことをまとめた統計によると、言語対応に関する困りごとは全体の約30%を占め、旅行中最も困ったこととされている。(国土交通省観光庁「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」より)

この結果から分かることは、多言語対応が観光ビジネスにおいていかに重要であるかということである。それに対応するため各観光地では、以下の事例のように様々な手法によって課題の解決に注力している。そこではITの活用が不可欠になっていることが分かる。

 

(1)スマートフォンアプリを活用した事例

秋田県では、訪日外国人観光客向けの無料スマートフォンアプリ「アキタノNAVI」を配信している。このアプリは、英語や中国語等の言語で県内の観光やイベント、交通情報などを一体的に検索でき、公共交通機関を利用した目的地までのルートなども把握できるというもので、ソフトウェア会社のジョルダンが県の委託を受けて開発した。

イベント情報と観光施設情報については、それぞれ約200件登録されており、祭りなどのイベントはカレンダー形式で開催日や概要が確認できる。また、鉄道やバス、タクシーといった交通機関も県内の関連企業の協力を得て、現在地から会場までの交通手段や所要時間、料金も分かるようにした。特産物や観光施設については、地域やカテゴリー別に検索できる。今後も様々なコンテンツが検索できる予定である。

 

(2)映像通訳サービスを導入した事例

奈良県にある春日大社はユネスコの世界遺産に登録されており、近年外国人参拝者が増加している。これに伴い、神社内各施設での説明が必要な機会も増加したが、片言の外国語での説明では参拝者の理解を充分に得られないという課題があった。そこで春日大社では、円滑なコミュニケーションを図るツールとして、情報通信サービス事業を展開するアイ・ティー・エックス()の多言語映像通訳サービス「みえる通訳」を導入している。(現在は(株)デリロジーサービスウエアが運営)

「みえる通訳」は主に春日大社内、庭園喫茶の接客や案内等で利用されている。日本語と外国語が話せる専門の通訳スタッフとフェイストゥーフェイスでお互いの顔や表情を見ることで、機械では判別できない神社に関連する難しい内容でも会話することが可能になり、また急なアクシデントやトラブルの際も言語で困らずスムーズな対応がとれるようになった。

 

(3)AIを活用した事例

福井県永平寺町は、「永平寺門前の再構築プロジェクト」を立ち上げて日々増加する訪日外国人旅行者を迎える環境整備を進めている。その一環として、参道の整備に併せて永平寺の入口付近に観光案内所を開設した。

これに伴い多言語対応の職員の配置を予定していたが、適材の採用が難しいという課題を抱えていた。そこでピーディーシー(東京都港区)が商業施設向けに展開している「AIコンシェルジュ」を観光案内用として採用した。

AIコンシェルジュは、同社のデジタルサイネージ(電子看板)で運用している施設向けプラットフォームであり、AI機能搭載の多言語対応のタッチパネル式サイネージである。各種言語で質問を行うと、キャラクターから音声・画像・文字で回答を得られ、画面をタッチすることで情報を取得することもできる。これらはピーディーシーの施設案内サイネージなどの運営ノウハウを活用して観光案内向けに開発を行ったものである。コンテンツは英語・中国語等の多言語に対応した永平寺町の観光案内仕様になっていて、国内外の観光客に永平寺や観光スポット、飲食店や物産店などのおすすめ店舗を紹介している。

 

2.観光ビジネスにおける多言語対応のポイント

(1)翻訳を必要とするシーンを整理する

翻訳した文章を利用するシーン、用途は様々であり、そのシーン・用途によって、求める翻訳品質は異なる。そこで観光ビジネスにおいて翻訳を使用するシーン・用途と求める品質を整理し、翻訳サービスを選択してコストの適正化を図ることが求められる。

 

(2)IT技術を活用して翻訳コストを抑制する

ITの進化により新たな翻訳手法が登場し、それらを活用することで、様々な翻訳サービスが提供されている。春日大社が使っている「みえる通訳」は、タブレットやスマートフォンを使い、ワンタッチで通訳オペレーターにつながり外国人観光客との接客をサポートする映像通訳サービスである。通訳コールセンターは英語、中国語、韓国語、タイ語、スペイン語等の10か国語に24時間365日対応している。料金も定額制で25千円/月と比較的安く、観光施設だけでなく、小売店・飲食店などでの活用が見込まれる。また、小型ながら対話を翻訳できる音声翻訳機「ポケトーク」なども出てきている。翻訳手法として期待できるものとして、ポスト・エディットを挙げたい。これは、機械翻訳の結果に対して人間が修正するというもので、翻訳の対象物と求める品質によっては、かなりの合理化が期待できるともいわれている。

 

観光ビジネスにおける多言語対応策を見てきたが、需要に対して供給が追い付いていないのが実情で、多言語対応の分野は、観光ビジネスに不可欠な分野として、多くのビジネス機会が潜在している有望な市場とも言えるのではないか。

 

<参考文献>

1.観光×ITの可能性:谷口賢吾

2.旬刊 旅行新聞

 

 

 

NPO 真・食の安全・安心支援機構所属

中小企業診断士 村田茂雄

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

 変わる日本の観光インフラ2/多言語対応力の向上

20170803

 

 

 外国人観光客向け店舗にするにはどうしたらいいのか

20180617

 

 

 外国人観光客集客にICT(情報通信技術)を活用しよう

20180616

 

 

 東京オリンピックの経済効果と中小企業の対応

20180523