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No.232 JRSメール配信サービス(2019.08.26)

JRSメール配信サービス発行事務局

 

 

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最近、日本におけるキャッシュレス決裁の普及にとって、極めて深刻な赤信号が灯っています。

多いに期待されたセブンペイは71日にサービスを開始したものの、不正利用の問題を受けて、わずか4日間のサービス期間に止まり、9月末日のサービス停止に追い込まれました。また、スマートフォンを使用したQRコード決裁の規格統一も進展が見られていません。10月の消費増税に合わせたポイント還元は、普及にとって大きなチャンスではありますが、10月から9ケ月間の時限措置となっており、中小店舗もキャッシュレス決裁の導入に、躊躇している側面もあります。

 

今回は、「中小店舗のキャッシュレス化」というテーマで、キャッシュレス決済の現状と中小店舗においては今後どのように取り組んでいけばいいか、その方向性について、イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属の中小企業診断士日置律子様に解説していただきます。

 

 

 

 

 中小店舗のキャッシュレス化

 

 

 

日本のキャッシュレス決済比率は2016年で約2割といわれており、諸外国にくらべて低い割合となっている。そこで「未来投資戦略2017」において政府は、日本のキャッシュレス決済比率を20276月までに倍増して約4割とすることを目標に掲げた。

 

その目玉となる政策が、消費税増税とともに始まるキャッシュレス・消費者還元事業(以下、還元事業)である。これは201910月から20206月までの9か月間、消費者が中小店舗でキャッシュレス決済を行った場合、支払った額の5%(大手フランチャイズチェーンの店舗は2%)のポイント還元が行われるというものである。もちろん、還元事業は消費税増税による需要の落ち込みを和らげる効果や消費税増税により打撃を受ける中小事業者の支援という目的で行われるものであるが、キャッシュレス決済推進への政府の強い決意が反映されているといえる。

主婦などの家計を預かる者の立場に立てば、消費税増税により家計が厳しい中、5%ものポイント還元は非常に魅力的で、201910月以降、キャシュレス決済を選択する者が増加することが予想される。そのため、現金決済しか対応していない店舗は、他店に顧客が流出する懸念がある。また、様々なキャッシュレス決済の手段を提供することによって、集客できる可能性が高い。

 

還元事業では、消費者だけでなく中小店舗の事業者にも配慮が行われている。カード会社などの決済事業者は、還元事業の期間中は登録する加盟店に対する決済手数料を3.25%以下とすることと、加盟店の決済端末導入費用の3分の1を負担することが参加する条件となっている。また、国は加盟店の決済端末導入費用の3分の2と決済手数料の3分の1を補助するため、中小店舗は自店舗の負担なしに決済端末を導入できることとなる。還元事業の対象となるキャッシュレス決済は、カード決済とモバイル決済である。

 

カード決済には、後払い(ポストペイ型)のクレジットカード、即時払い(リアルペイ型)のデビットカード、電子マネーと呼ばれる前払い(プリペイド型)のICカードがある。一方、モバイル決済には、電子マネーと同様にスマホなどをタッチして決済する方式とQRコード決済がある。

 

QRコード決済は、顧客がスマホなどに表示したQRコードを店舗側が読み取る「ストアスキャン方式」と、顧客が店舗固有のQRコードをスマホなどで読み取る「ユーザースキャン方式」の2種類がある。QRコード決済では事前に入金を行って決済するプリペイド型もあれば、クレジットカードと紐づけして後払いのポストペイ型もみられる。さらに、金融機関が提供するQRコード決済では即時に口座からお金が引き落とされるリアルペイ型もある。

このようにキャッシュレス決済には多様な手段があり、しかも多くの決済事業者が参入して、サービスを提供しているため、中小店舗がキャッシュレス決済を新たに導入したい、あるいは決済手段を増やしたいと考えたとき、何を導入したらよいかわからず、困ることも多いと思われる。

 

キャッシュレス決済導入においては、顧客の利便性と店舗側の負担の両面から検討を行う必要がある。

 顧客の利便性だけを考えれば、より多くのキャッシュレス決済の手段を用意した方がよいことになるが、それでは店舗側の負担が大きい。より多くの顧客が利用する決済手段を選びたいと考えても、現在、還元事業を受け、各決済事業者が大幅なポイント還元などで顧客の囲い込みを行っており、シェアは流動的となっている。

 また、子供や何らかの事情でクレジットカードを持っていない顧客も多いため、キャッシュレス決済をクレジットカードのみとするのは避けたい。QRコード決済は顧客によるスマホの操作が必要となるため、カードや電子マネーに比べると顧客の手をわずらわせることになり、高齢の顧客などでは難しいかもしれない。

 

次に店舗側の負担を考えると、端末や設置の導入費用と決済手数料といった費用面と顧客がキャシュレス決済した分の入金のタイミングといった資金繰り面がある。

 店舗がクレジットカードやデビットカードに対応するためにはカードリーダーを導入することとなる。また、電子マネーやスマホなどをタッチするだけで決済できるのは日本独自の「Felica(フェリカ)」という技術によるもので、店舗側は電子マネー決済端末が必要となる。カードリーダーや電子マネーの決済端末を設置していない店舗にとっては、今回の還元事業により、費用負担なしで導入できるチャンスとなる。しかし、ソフトのバージョンアップや買い替え時に費用が発生する可能性がある。

 

また、初期費用以上に注意しなければならないのが、決済手数料である。一定期間決済手数料を無料としているQRコード決済事業者もあり、また還元事業の期間中は手数料の負担が軽減される。しかし、一度、キャッシュレス決済手段として導入した後、それをなくすのは顧客の不満となりやすい。そのため、将来的な決裁手数料も視野に入れて、導入を検討しなければならない。クレジットカードの決済手数料は個人事業主などの小規模な店舗では4%から7%と高い場合もあり、利幅が小さい事業ではキャッシュレス決済手数料で利益の大部分を失うことになりかねないからである。

 さらに、資金繰りの面からも検討が必要となる。カード業者などの決済業者からの入金が早いほど、頻繁に入金があるほど資金繰りは楽である。しかし、1か月に1回しか入金がなければ、資金繰りが厳しくなり、銀行などから運転資金の借り入れが必要になる場合も考えられる。入金の頻度が高い場合は振込手数料のことも考えておく必要がある。

 

キャッシュレス決済への対応は様々であるが、比較的単価が高い商品やサービスを扱っている店舗ではすでにクレジットカードへの対応はしているとみられるが、もし対応していなければ、今回の補助を利用して決済端末を整備するのがよいだろう。

比較的客数が多く、レジ作業をスピーディに行いたい、セルフレジを導入したい場合などは電子マネーやモバイル決済のタッチ式を導入したい。いずれの電子マネーにするかについては、都会の駅近くでは交通系のICカード、大型スーパーやショッピングモールなどの近くではそこで使えるICカードが選択肢となる。なお、クレジットカードや電子マネーの各決済業者をバラバラに契約する方法もあるが、一括で取り扱っている決済業者と契約する方法もある。決済手数料などの費用と事務作業の効率を検討して決めたい。

今まで現金決済が主で、これからもキャシュレス決済の費用負担をできるだけ抑えたい場合は、QRコード決済が最も適している。QRコード決済業者の決済手数料は他の決済業者に比べて比較的少ないからである。QRコード決済業者もいくつかあるが、顧客の利便性の面から、近隣の店舗で導入が進んでいる業者を選ぶのも一つの方法である。

 

なお、2019年秋から「Bank Pay」が始まる予定である。「Bank Pay」は、銀行口座から即時に引き落とされるリアルペイ型で、1,000以上の銀行などの金融機関が参加予定となっている。顧客側にとってはクレジットカードをもっていなくても使え、しかも前払いでチャージする必要がない。店舗側にとっても決済手数料や入金などの面で有利な条件となる予定である。また、「Bank Pay」は店舗独自のポイント制を導入することができるので、顧客囲い込みや店舗に有利なキャッシュレス決済への誘導に使うこともできる。今後のキャッシュレス決済の選択肢の一つになろう。

 

 

 

イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属

中小企業診断士 日置 律子

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

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情報番号

 

 

 キャッシュレス化の動向と中小企業の対応策

20180524

 

 

 フィンテックの動向と中小企業の対応策

20180526