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No.253 JRS メール配信サービス(2021.05.31)

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今回は、「BCP(事業継続計画)」シリーズの2回目です。

BCPといえば、地震や台風といった自然災害や火災などによる事業停止に対処するイメージが強かったのではないかと思います。

新型コロナウイルス感染症によって、設備などには影響のない想定外の緊急事態も発生し、それらにも対応する必要があることが分かりました。

そこで今回は、「パンデミック(新型コロナウイルス感染症)とBCP計画」というテーマで、新型コロナウイルス感染症への対処を含めたBCP計画について、イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属の中小企業診断士 日比雅之氏に解説していただきます。

 

 

 

パンデミック(新型コロナウイルス感染症)とBCP計画

 

 

 

BCP(ビジネス・コンティニュティ・プランの略で以下BCPという)計画は、災害などの緊急事であっても、事業を存続させるために短時間で最善の行動により、復旧するべく、あらかじめ、どのような事態が起こりえるか考え、行動を決めておき、訓練などを通して備えておく計画のことである。災害に巻き込まれても、自社の被害を最小限にし、サプライチェーンから離脱しないことが中小企業にとって重要である。

これまでの災害は、地震(停電・断水含む)、風水害、火災、津波、火山噴火等を想像するが、パンデミック、システム障害、サイバーテロ、紛争等を含んだオールハザードに対してもBCP計画の策定範囲となる。

本テーマでは、世界保健機構(以下WHOという)において、パンデミックと認定され、全世界で感染拡大が続いている新型コロナウイルス感染症に関するBCP計画について言及する。

2019年年末に中国での新型感染症が日本で報道された。2020116日に日本で初めての感染者が確認され、中国武漢市ではロックダウンが生じた。20202月に豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客に感染者が急増し、連日メディアで報道された。その後、全国規模で小中学校の臨時休校、47日には緊急事態宣言が発出され、一時的に感染者が減少したが、第2波、第3波、第4波と時が経過するごとに感染者の規模が大きくなり、対策に追われている。

さて、パンデミックにおける中小企業への影響は、他の災害のように設備、機械に大きな損傷は発生しない。影響は人の行動制限が発生し、業務遂行に支障が生じ、生産減、売上減、情報の混乱が起きることである。このため、業界にもよるがサプライチェーンに影響する期間が長く続き、収束が見えにくい。被害の大きさは、分かりにくく見通しを立てにくいという特徴がある。

 

(1)リスクの特徴

①対応期間が地震や風水害と比較して長期にわたる。最短での復旧を目指すというより、経営資源の制約の中で持ちこたえていくことがポイントとなる。

②地域が広く全国・全世界に及ぶ。このため、地域分散によるリスク軽減が期待できない。

③対面によるコミュニケーションが制限される。テレワークが推奨される。

④他社が動く前に行動を起こさないと資材調達に支障が生じる。(例:マスク、半導体等)

⑤事態が段階的に進行し、復旧開始のポイントを見つけづらい。

⑥繰り返し影響がでるため、状況に合わせた対応が求められる。

 

(2)経営資源への影響

①人員面 出社率低下、従業員の感染により人員確保またはテレワークが求められる。

②設備面 設備・事務所など設備面への直接の被害は生じない。しかし、業務遂行様式の変化や長期化により事務所縮小化が課題となる。

③資金面 営業時間短縮や事業停止に耐えられる運転資金が必要となる。

④情報面 基本的に寸断されない。しかし混乱防止のため、適切な情報提供が必要となる。

特にセキュリティ面で対策やルール化が必要となる。

 

(3)パンデミックにおけるBCP計画策定の考え方

BCP計画策定は、基本方針立案、重要商品の検討、被害状況の確認、事前対策実施、緊急時の体制の整備、BCPの定着と見直しを踏まえ策定することが基本となる。

②社内での感染対策により人の命を守り、人員確保のため検温をはじめとする健康管理、3密対策、会議のリモート化、退社後の行動管理まで踏み込んだ対策が必要となる。

③損益分岐点(利益0円となる売上高)の考え方から生存分岐点(収入=支出となる売上高=運転資金が減少しない売上高)への考え方で経営資源の毀損を極小化する。

④そのために、経営基盤強化と内部留保蓄積が特に重要な考え方となる。

⑤重要業務の特定と影響した場合の挽回施策を事前に研究・検討していくことが重要である。

⑥組織改革、社員教育を通じてテレワークを中心とするデジタル化の推進、訓練が必須となる。

⑦金融機関への経営状況報告と緊急融資への備えおよび取引先とのパンデミック時における災害協定締結が必要となる。

⑧雇用安定助成金・持続化給付金などの支援施策や事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>、IT導入補助金や各支援機関による感染症対策講習やBCP計画支援策などの制度や情報を収集する。

⑨中小企業のパンデミックとBCP計画の策定には国や各都道府県による情報提供や支援策、BCPマニュアルのテンプレートなどを積極的に活用することが期待される。

 

人を守り、企業を守り、持ち応える企業の体力をできる限り強化、長期化する、つまり企業生存・存続の考え方により、運転資金を枯渇させない対応策を実行することが期待される。

多くの場合、中小企業の内部留保は少ない傾向にあり、感染症の影響を大きく受けた場合に、売上低下の影響を小さくすると共に、顧客離れをいかに防ぐかがポイントとなる。つまりサプライチェーンを寸断させない、寸断によって自社がサプライチェーンから離脱しない、させないBCP計画策定をすることが、中小企業に求められる。

 

 

 

イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属

中小企業診断士 日比雅之  

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

 感染症対策を含んだBCP・事業継続力強化計画の策定方法

20200682

 

 

 BCPとサプライチェーン強靭化に向けた様々な方策

20200688

 

 

 BCP策定の考え方と具体的な手順と策定事例

20200684

 

 

 情報セキュリティとBCP

20200742

 

 

 

 

 

 

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