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No.254 JRS メール配信サービス(2021.06.28)

JRSメール配信サービス発行

 

 

いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。

 

今回は、「BCP(事業継続計画)」シリーズの3回目です。

ここ数年、毎年のように日本各地で台風や線状降水帯による大雨の被害が出ています。浸水による工場の停止や物流の寸断などにより、企業活動にも大きな影響が出ています。

そこで今回は、「風水害とBCP計画」というテーマで、これから本番を迎える風水害への対処を含めたBCP計画について、イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属の中小企業診断士 日比雅之氏に解説していただきます。

 

 

 

風水害とBCP計画

 

 

 

近年、台風の影響を起因とする暴風雨や線状降水帯の被害が想像を超える規模で発生している。これまでは数年に1回しか発生しなかった台風や豪雨が毎年複数回発生し、しかも大型化している。20187月の西日本豪雨、20189月に関西を中心に襲った台風第21号、20199月に千葉県を通過した令和元年台風第15号、201910月の令和元年台風第21号などが河川の氾濫、土砂災害など甚大な被害、爪痕を残したことは記憶に新しい。

大規模災害の多発とその影響の大きさを考えると企業の事業継続計画(BCP計画)に取組むことが喫緊の課題といえる。台風による暴風雨や線状降水帯の発生による豪雨によってインフラ寸断、停電の長期化、電車の線路や道路が土砂崩れにより寸断され運休される事態が多く発生している。中小企業にとってもサプライチェーンの寸断が発生したことで脅威への備えが企業経営をする上で重要な問題となっている。

BCP(ビジネス・コンティニュティ・プラン)計画については、本メールマガジンNo.252号及びNo.253号を参照されたい。

 

(1)中小企業サプライチェーン寸断事例

大手企業のサプライチェーン寸断は自動車及び関連製造業者、半導体、電気等の製造業者と数多くニュースになるが、中小企業の事例はあまり報道されない。令和元年台風第21号によって千曲川、阿武隈川の氾濫や荒川流域支流、江戸川流域支流の氾濫により水没した地域が発生した。当時、筆者の支援先のA社が製造依頼している発注先工場が水没により被災した。A社は発注品が未納品となる被害を受け、顧客への納品が不可となり、深刻な影響が発生した。日本政策金融公庫の緊急融資や他の取引先に代替品を納品してもらうなどの顧客対応策に追われた。しかも回復まで3ヶ月を要した。この間、A社に発注している会社から同業事業者への変更が検討され安定的経営に危機が生じた。大事には至らなかったが、この時の経験からA社社長は、BCP計画の策定により有事の際、早期復旧の必要性を強く感じた。

 

(2)風水害の被害の特徴

①地震と違い、リスクの予見が可能である。

②停電、断水が発生し、復旧に長期間かかる。

③土砂災害、河川の氾濫、越水洪水、内水氾濫の発生によるインフラの寸断によりサプライチェーンへの影響が発生する。

④ハザードマップの活用に加えて、国土交通省が設置しているライブカメラで河川の水位上昇をネット回線で逐次確認が可能である。

⑤他の災害の備蓄品の他に、止水板、止水壁、ポリマー性吸水土嚢が必須となる。

⑥重要設備については可能な限り上層階の設置が望ましい。

⑦電源確保のため、EV車及び蓄電変換機(パワーステーション)の装備が望ましい。

 

(3)経営資源への影響(風水害、地震、パンデミックの比較) 

 

風水害

地震

パンデミック

ヒト

×

設備・モノ

×

×

サプライチェーン

×

×

×

 

(4)風水害におけるBCP計画の考え方

中小企業における計画のポイントはサプライチェーンからの離脱防止がポイントとなる。他の会社に代替されないよう早期復旧が重要となる。考え方のポイントは以下のとおりである。

①基本方針の策定(目的、策定範囲、推進体制、リスク分析により被災した場合の重要業務をどんな方法で実施するかの検討)

②優先事業・重要業務の選定(優先的に復旧する商品・サービスの選定、目標復旧時間を定める)

③業務プロセスの分析・被害想定(ボトルネックの特定、業務の脆弱性評価、災害の影響を想定する。ハザードマップ活用、国土交通省の河川設置のライブカメラ活用)

④対策と戦略検討(被害回避・軽減・非常時の組織体制・行動・情報システム、ロジスティックス維持代替策、財務手当、リスクコミュニケーション)

BCP文書化(検討内容の文書化)

BCPの維持、見直し改善・教育訓練(実効性のあるマネジメント体制構築)

 

(5)中小企業が活用できる施策

①事業継続力強化計画認定制度の活用(経済産業大臣が認定)

認定マーク制度、税制措置、金融支援、一部補助金優遇があり、20213月末の認定件数は全国で25,627件の実績となっている。

②公的機関のBCP作成のためのテンプレート 策定ガイドの活用。

③中小企業施策による融資、災害認定(いわゆるセーフティネット4号認定)、専門家派遣、教育研修、BCP策定講習等の活用

④東京都中小企業振興公社では、BCP実践に必要な設備等の購入費用を上限1500万円の助成金を募集している。(令和3年度 BCP実践促進助成金)

 

BCP計画策定により被災しても各種支援施策を活用し、早期復旧を果たし、受発注における取引先変更につながらないように不断の準備と経営基盤強化を図ることが求められる。

 

 

 

イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属

中小企業診断士 日比雅之

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

 BCPによる災害発生直後の行動マニュアル

20200685

 

 

 BCPによる災害時に備えたSNSの活用方法

20200686

 

 

 BCPとサプライチェーン強靭化に向けた様々な方策

20200688

 

 

 BCP策定の考え方と具体的な手順と策定事例

20200684

 

 

 

 

 

 

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