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No.255 JRS メール配信サービス(2021.07.28)

JRSメール配信サービス発行

 

 

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今回は、「BCP(事業継続計画)」シリーズの4回目です。

今年の3月に東京商工会議所が実施した「会員企業の防災対策に関するアンケート調査」によると、BCP策定済企業の99%が、地震を想定したBCPを策定しているとのことです。

東日本大震災を契機にBCPを策定したという企業もあるようです。

そこで今回は、「地震とBCP計画」というテーマで、中小企業が策定するBCPの中心となる地震への対処を含めたBCP計画について、イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属の中小企業診断士 日比雅之氏に解説していただきます。

 

 

 

地震とBCP計画

 

 

 

地震は突発的に発生する。物的被害だけでなく、人的被害が発生する可能性があり、人命第一、安全確保が求められる。また、企業活動への影響は、交通網やライフラインといった社会インフラ機能の回復が長引くと、事業の回復が遅れ、長期の事業停止に追い込まれる。サプライチェーンの途絶・遅延や購買自粛などを伴い、被災していない地域にも経済的影響が出る。BCP計画を策定している中小企業は約30%程度と東京商工会議所の会員によるアンケート調査もある。策定目的は地震に備えると多く回答され、地震に備える関心の高さが分かる。(出所:東京商工会議所会報誌、2021620NewsOpinion

国は10年以上にわたり、BCP普及事業を推進してきたが、2019年に方針を転換した。中小企業強靭化法(2019712日公布716日施行)により、文書主義・形式主義から発災時実効性が高い対策・対応に絞って取り組み、同法に基づき、防災減災に取組む事業者に事業継続力強化計画認定制度の普及を図っている。

 

(1)地震の発生確率と影響

地震は油断をした時に突然発生する。今後30年以内に震度7クラスが発生する南海地震の確率は70%と言われる。交通事故で負傷する割合は24%と言われ、交通事故の約3倍の確率となる。首都圏直下型地震発生時には、震度6強の揺れを観測すると予想されており、南海、中南海、東海の同時地震(西日本大震災)が発生するとその影響は人的被害、建物被害、火災の発生、通信網の遮断、道路の液状化、物流道路の寸断、停電(ブラックアウト含む)、断水の長期化等が生じ、避難先への移動すらできない可能性が高く、サプライチェーンの途絶から回復に時間がかかり、社会経済活動に大きな影響がでる。働く場の喪失、顧客の流出、事業の廃止、倒産に陥る可能性が高いと言われている。

 

(2)地震被害の特徴

 地震被害の特徴は以下のとおりである。

①突然に発生するため、事前の備えをしていないと早期復旧が大幅に遅れる。

②インフラ(上水道、電力、ガス、通信、道路、電車等)停止が企業活動に影響する。

③火災の発生や(通電火災含む)、落下物や転倒などによる人的被害がでる。

④沿岸部では津波発生の可能性がある。

⑤地震ハザードマップの活用で予知はある程度可能である。

⑥中小企業は地域分散や人的分散ができず、被災すると早期復旧が困難となり取引先から取引変更されるリスクがある。

 

(3)地震におけるBCP基本計画策定の考え方

中小企業における計画策定のポイントは人的被害の軽減を第一に、早期復旧がポイントとなる。サプライチェーンからの離脱を発生させないことで、顧客の流出を防ぎ、事業の縮小、倒産防止の備えが必要となる。

①基本方針の策定 

リスク分析(ハザードマップや自社内の被害想定等)により被災した場合のリスクを検討する。

②優先事業・重要業務の選定

優先的に復旧する商品・サービスの選定、目標復旧時間を定める。

③業務プロセスの分析・被害想定

人員の安全確保と業務遂行最低人員の想定、事業場内点検によりリスクの洗い出し。

④対策と戦略検討

リスク回避・リスク低減・リスク許容・リスク転嫁(保険等)による基本施策の事前準備と実行が重要である。

BCP計画の日常的な見直し改善と教育訓練が重要

 

(4)地震によるBCP計画具体策のポイント

BCP計画策定は平時の備えや発生時初動が被害軽減、早期復旧に重要である。

①備蓄品のローリングストック(水、食糧、災害用トイレ、毛布等)

②社内点検による重要物の固定(整流器の落下防止、ボンベや備品・書類棚の固定等)

③非常口階段点検とエレベータ使用停止の徹底、感電ブレーカー設置、発電機購入

④社内データのクラウド化等重要データのバックアップ手段や管理の徹底

⑤帰宅困難者対策および出社人員確保、避難場所の告知、連絡網・体制の整備更新

⑥社長不在時の災害時リーダー指名と社員への徹底

⑦取引先や金融機関との事前災害協定の検討と実行による事業継続と資金繰り確保

 

(5)中小企業が活用できるBCP支援施策

国や各支援機関の支援策を確認し、活用することが望ましい。

①事業継続力強化計画認定の申請により事前準備と社内意識の向上

②公的機関のBCP作成のための策定ガイドや講習会の活用

③中小企業融資、災害認定(セーフティネット4号認定による融資あっせん)の活用

BCP計画実践に必要な設備購入のための各支援機関で公募される補助金の活用

 

BCP計画を作成し、早期復旧、日常的な生産性向上、財務と経営基盤を強化し、被災しても長期間耐えられる企業体力の向上が重要である。 

 

 

 

 

イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属

中小企業診断士 日比雅之

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

 地震で会社の建物が半壊した

20062207

 

 

 BCPによる災害発生直後の行動マニュアル

20200685

 

 

 大規模災害発生時の帰宅困難者対応の留意点

20200689

 

 

 BCPによる災害時に備えたSNSの活用方法

20200686

 

 

 

 

 

 

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