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No.257 JRS メール配信サービス(2021.09.27)

JRSメール配信サービス発行

 

 

いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。

 

経営者の皆さんの中には、経営計画を作られている方もいらっしゃると思います。

経営計画は、中期経営計画で3~5年、環境変化の激しい時代にあって、長期経営計画を立てるのは大変なことだと思います。

そんな時、助けになるのが「経営デザインシート」です。環境変化に耐え抜くためには長期のビジョンが重要との考えから、将来を構想するための思考補助ツール(フレームワーク)として、内閣府の知的財産戦略推進事務局が作成したもので、企業経営に役立つツールです。

ただ、現状では、まだあまり活用されていないようです。

そこで、今回から2回に渡って、「経営デザインシート」について取り上げます。

今回は、イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属の中小企業診断士 宮川公夫氏に「経営デザインシート」を紹介していただきます。

 

 

 

経営デザインシート

 

 

 

かつては、技術的に優れたモノやサービスを提供することで競争に打ち勝ち、成長することができた。品質の良い製品を多く生産することが成功のカギであった。しかし、現代はそれだけではビジネスに勝てない「VUCAの時代」と言われ、企業経営を取り巻く環境は複雑で大きく変化している。

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字で構成されるもので、様々な要因が絡み合い先の見えにくい状態の事である。そのため、企業は経営計画を策定し、全社が一体となって経営課題の解決に取り組むことが必要である。

多様化する顧客のニーズやウォンツに対応するためには、これまでの価値を生み出す仕組みを把握し、ニーズやウォンツに訴求できるこれからの価値を生み出す仕組みを構想する、すなわち「経営をデザインする」ことが重要である。それを進めるために「経営デザインシート」を積極的に活用することが求められる。

 

1.経営計画により今回のパンデミックに対応

中国の武漢市で発生したと考えられる新型コロナウィルスによる感染症が、2020116日に日本初の感染者が確認された。その後、世界中で感染が拡大しパンデミックとなり、同年予定されていた東京オリンピックは1年延期となった。そのため政府も様々な支援策を講じたものの、終息までにかなりの時間を要している。

2021年版中小企業白書によると、経営計画の策定有無で感染症の影響は変わらない一方、経営計画の期間が長い企業の方が、受けた影響がやや小さいという傾向が見られた。

 

2.経営計画の運用と感染症の影響

今般の感染症による業績へのマイナスの影響を分析すると、業種を問わず、影響が小さかった企業が一定数存在する。つまり、同業種の中でも影響に差異があるということは、外的要因以外に、企業の備えに違いがあったと考えられる。

経営方針や事業環境などを整理する手法の一つに経営計画の策定があるが、経営計画の策定や運用を通して、自社のおかれた事業環境や、その変化に対して取るべき行動を明確化し、経営改善PDCAサイクルを回していくことが重要である。

感染症流行前において、経営計画を見直した企業の調査結果から次のような回答が得られた。「自社の課題が整理された」、「円滑に資金調達ができた」と答えた企業の割合が高い。「経営危機を乗り越えることができた」という企業の割合は低いが、円滑に資金調達ができたことで危機に陥らなかった可能性も考えられる。

従業員規模別では、従業員数が多い企業ほど「事業のリスクを回避できた」「自社の課題が整理された」の回答割合が高い。また、従業員数が小さい企業ほど「円滑に資金調達ができた」「従業員の雇用を守ることができた」の回答割合が高い。

一般的に経営計画を明文化する必要性があるかどうかは、従業員や株主、金融機関などのステークホルダーとの関係性による。経営計画を策定した場合には、それが実態に即したものであるかどうか点検することが重要である。こうした取組ができている企業では感染症流行下のような大きな事業環境変化にも強い可能性があると推察される。

 

3.経営デザインシートによる経営計画の策定

実際に経営計画を策定する上で重要なことは環境変化を見据えて自社や事業の「これまで」の理解に基づき「これから」を構想することである。「経営デザインシート」は、将来を構想し、持続的成長をするための思考補助ツールとしてのフレームワークであり、その実現に向けて今から何をすべきか長期的な視点で戦略を策定するためのものである。そして、「価値を生み出すしくみ」を描くツールが「経営デザインシート」である。

経営デザインシートは、社会、市場へ伝えたい自社/事業の想い・イメージを明確化し「これまで」の価値を生み出すしくみを把握し、「これから」の価値を生み出すしくみを構想し、今から何をすべきかを策定するための思考補助・デザインツールである。

 

4.経営デザインシートの構成

経営デザインシートは、「(A)企業理念/事業コンセプト」、「(B)これまでの価値創造メカニズム」、「(C)これからの価値創造メカニズム」、「(D)これまでからこれからへの移行戦略」の4つの要素で構成されている。

環境変化に耐え抜き持続的成長をするために、自社や事業の存在意義を意識した上で、「これまで」を把握し、(C)長期的な視点で「これから」の在りたい姿を構想する。(D)それに向けて今から何をすべきか戦略を策定する。中でも「これからの価値創造メカニズム」が重要である。

 

今回の新型コロナウィルスによる感染拡大のような環境変化に的確に対応し、問題を克服していくために全社が一つになって「経営デザインシート」を積極的に活用して「経営をデザインする」ことによって、企業の「これから」を可視化する。これを踏まえて課題解決に取り組み、これからの価値を生み出す仕組みを構想し、成長発展を推し進めていただきたい。

次回は、経営デザインシートの具体的な活用法についてみていきたい。

 

 

 

イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属

中小企業診断士 宮川公夫

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

 経営デザインシートとは何か

20200754

 

 

 経営デザインシートの作成手順

20200691

 

 

 経営デザインシートの活用

20200692

 

 

 

 

 

 

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