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いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。
今回のメルマガは、前回紹介させていただいた「経営デザインシート」の具体的な活用方法についてです。 本シートを作成した内閣府知的財産戦略推進事務局によると、「経営デザインシートは、企業等が、将来に向けて持続的に成長するために、将来の経営の基幹となる価値創造メカニズム(資源を組み合わせて企業理念に適合する価値を創造する一連の仕組み)をデザインして在りたい姿に移行するためのシート」としています。 環境変化が激しい時代にあって、その変化に耐え抜くためには長期のビジョンが重要との考えから、将来を構想するための思考補助ツール(フレームワーク)として作成されたもので、企業経営に役立つものです。 首相官邸のホームページの、会議等一覧>知的財産戦略本部>経営をデザインする(知財のビジネス価値評価)、 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html からシートが取り出せます。実際のシートをご覧になりながら、お読みいただければと思います。 具体的な活用方法の解説は、イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属の中小企業診断士 米倉早織氏にお願いいたします。
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経営デザインシートの活用方法 |
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はじめに 経営デザインシートの種類・構成と、年商2億円の高級理美容用刃物メーカ(仮想企業)の事例も交えた記述の仕方について解説する。
1.経営デザインシートの種類と構成 (1)経営デザインシートの種類 経営者が作成する「経営デザインシート(全社用)」(「全社シート」)、「経営デザインシート(事業が1つの企業用)」(「事業が1つの企業用シート」)と、事業の部門長が作成する「経営デザインシート(事業用)」(「事業シート」)がある。 (2)各シートの構成 上部(基本事項)、左部(これまでの「価値創造メカニズム」)、右部(これからの「価値創造メカニズム」)、下部(「これから」の姿への移行のための戦略)から成る。 (3)作成方法、開示時の留意点 模造紙等の大きさに拡大、メンバーが自己の考えを付箋紙に記述、各欄に貼り付けながら、記載する内容を決めて行く方法もある。また、情報セキュリティレベルを明確にし、開示すべきでない情報は伏せる
2.「全社シート」の記述方法について 以下では、4つのエリアについてその書き方を、事例も交えて解説する。 (1)「自社の目的・特徴」、「経営方針」(シートの上部) ①自社の目的・特徴:企業理念、重視する価値観・ありたい姿、企業文化・風土等 例:手作りの高級理美容刃物の提供を通して、人々の美の追求に貢献する。 ②経営方針:経営戦略の方向性・基本行動指針、全社目標、KPI等 例:革新的技術が5年後に特許期限切れになることを踏まえ、従来の理美容用ハサミの製造・販売に拘らず、来年度中に、技術を活かせるネイルニッパのリースに進出する。 (2)これまでの価値創造メカニズム(シートの真中左半分) ①価値 1)提供してきた価値(社会的・経済的価値):顧客への提供価値(自社が選ばれている理由等)、社会への提供価値(社会的課題解決で提供してきた価値等) 例:切れ味が良く研ぎに出す頻度も少ない。国内外のベテラン理髪師やカリスマヘアデザイナーに対し、理美容用ハサミ(10万円/丁を年間2,000丁)を販売する。 2)提供先から得てきたもの:社会的信用や、顧客から得たデータ等も含む。 例:評判と口コミによる新たな顧客。年商2億円。 ②事業ポートフォリオ 1)各事業の役割・相互関係等:別に定める「作成補助シート1」による整理も可能 2)自社の強み:自社故に採用できるビジネスモデル、事業間のシナジー効果等。別に定める「作成補助シート3」(SWOT分析)による整理も可能 例:・理美容用ハサミを鋳造職人と組み製造、販売(直販) ・歯の噛合せ角度が、疲労が少ないまま切れ味を維持できる商品差別化要素 ③主要な資源:複数事業で共用する資源や価値創造に大きく貢献している資源を、以下の事項を考慮しつつ記載する。 ・「人的・物的資源、知的財産、資金、情報システム、営業ノウハウ」や、「財務・製造・知的・人的資本、社会・関係資本、自然資本」などに分ける。 ・別に定められた「作成補助シート2」による整理も有効 例:販売店舗網、刃物研磨技術(自社ノウハウ)、歯の噛合せ角度特許(5年) ④外部環境:自社では変更困難な項目を「プラス/マイナスであった要素」に分けて記載。マクロ環境(政治、経済、社会、技術の環境)を分析する。 例:人口減により理美容室店舗は減少傾向(全国で約30万店)、模倣品の流通、 粗悪で安価な外国製品が近年大量に流通、理美容ハサミ市場が飽和状態 ⑤全社課題(弱み):収益性の低さ、市場の縮小傾向、生産能力の低さ、特定技術の不足、余剰資源、負債の多さ、株主の片寄り、事業承継の問題、等。別に定める「作成補助シート3」(SWOT分析)による整理も可能 例:あと5年で特許期限を迎えるが、ハサミ事業に依存した経営。事業を多角化する資金等の余裕は多くない。 (3)「これから」の姿への移行のための戦略1(シートの左下の一部) ①外部環境:別に定める「作成補助シート3」(SWOT分析)による整理も可能。 例:1)プラス要素:・女性のネイルブーム。高級サロンでは、仕上がり質が重視 ・流通しているネイルニッパは仕上がりが悪く、顧客満足度が低下、トップネイリストは切れ味の良いネイルニッパを求めている。 2)マイナス要素:セルフネイルが浸透、ネイルサロン数の伸びは鈍化傾向 (4)「これから」の価値創造メカニズム(シートの真中右半分) ①価値 1)提供する価値 :「全社課題(弱み)」、「これから」の「外部環境」を踏まえる 例:・ベテラン理髪師等に対し理美容用ハサミ(10万円/丁を年間2,000丁)を販売 ・トップネイリストに対し美容用ネイルニッパ(5万円/丁・年で年間500丁)をリース ・美容意識の高い女性に対し廉価版美容用ネイルニッパ(5,000円/丁を年間5,000丁)を販売 2)提供先から得るもの:外部関係者に開示をする場合、財務パフォーマンス(予測)についても開示をすると有効 例:・トップネイリストからの高評価や、アルファブロガーの拡散 ・美容意識の高い女性の口コミによる、市場の更なる拡大(約2.5億円/年と予測) ②事業ポートフォリオ 1)各事業の役割・相互関係:別に定められた「作成補助シート1」による整理も可能 2)自社の強み 例:・理美容業界用ハサミを鍛造職人と組んで製造、販売 ・美容用ネイルニッパを鍛造職人と組んで製造、業界向けにリース・リテール販売 ・研磨技術と鍛造技術による切れ味は、他の業務用刃物にも転用可能な要素 ・一般消費者には、既存店舗網の活用に加えて、ネット通販も行う ③主要な資源:別に定める「作成補助シート2」による整理も可能 例:1)内部資源:販売店舗網、ネイル業界の顧客データ、ネイルニッパ鍛造技術、刃物業者としてのブランド、歯の噛合せ角度特許(5年) 2)外部資源:旧知の職人の刃物の鍛造技術 (5)「これから」の姿への移行のための戦略2(シートの一番下) ①移行のための課題:新たな市場開拓、市場分析、新製品開発、採用増員や育成、新製造設備等の資源の導入、情報システムの改善等 ②必要な資源:新製造設備、営業・開発・運用要員、先端技術、新工程管理システム等 ③解決策:必要な資源をどのように調達するか、どのように「これから」の姿に移行させるかを記載。知財を連携・交渉に使うことも想定され、別に定める「作成補助シート4」で知財を整理しておくと良い。 例:①移行のための課題:トップネイリストへのリースチャネルの開拓・確保 ②必要な資源:トップネイリストへのリースチャネル、一般消費者への販売チャネル、ハサミの技術をネイルニッパに転用する技術 ③解決策:トップネイリストへのリースチャネルは口コミで開拓する。高級ネイリスト等からのネット拡散を通じて、同一技術を用いた廉価版ネイルニッパをリテール販売する。ハサミ製造技術をネイルニッパに転用する技術を自主開発する。
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イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属 中小企業診断士 米倉早織 |
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なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。
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関連情報 |
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JRS経営情報(PDFサンプル)
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情報番号 |
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◆ 経営デザインシートとは何か |
20200754 |
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◆ 経営デザインシートの作成手順 |
20200691 |
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◆ 経営デザインシートの活用 |
20200692 |
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