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No.263 JRS メール配信サービス(2022.03.28)

JRSメール配信サービス発行

 

 

いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。

 

新型コロナウイルス感染症の影響で、厳しい事業環境が続いています。そのような環境下でも、事業を維持発展させていくには明日の売上を確保することが必要です。そこで重要になるのは営業活動です。

ただ、営業活動を行っていくにも、厳しい環境のなか、経費削減のために効率性を追求するのか、それとも活動の効果を求めるのか、悩ましいところです。

そこで今回のメルマガは「効率性と効果性追求の両立が営業活動の基本」と題して、営業活動における効率性と効果性をどのように考えればよいのか、青森中央学院大学教授でコンサル経験も豊富な塩谷未知氏に解説していただきます。

 

 

 

効率性と効果性追求の両立が営業活動の基本

 

 

 

営業は明日の糧づくりが役割である。研究開発、生産や販売は明後日や今日の糧づくりとは異なっている。営業は明日の糧づくり、そのため効率性を追求し営業人員を減らしても今日の売り上げに影響はなく、営業経費が減る分だけ営業効率は上がる。しかし何か月か経つと、必ず明日のお客さんからの引合いや相談、問い合わせが減り売上が次第に減少する。

マネジメントは大きく分けると効率性と効果性の追求という2つの面がある。マネジメントの基本である効率性(Efficiency)と効果性(Effectiveness)の両面から、営業活動について一緒に考えてゆきたい。

 

 マネジメント2つの面

経営資源(ヒト・モノ・カネ)の投入(インプット)と、売り上げなどの成果(アウトプット)の関係には2つある。アウトプットは変えずにインプットを下げるのが効率性、一方、インプットはそのままで、売り上げなどの成果を上げるのが効果性のマネジメントである。

どちらも大切であるが、目先の結果に力点を置いての効率性の追求は、経営資源の削減、例えば先ほど触れた営業人員の削減が思い浮かぶ。少しぐらい営業人員を減らしても売り上げには影響することは稀である。インプットを減らしてもアウトプットが変わらない、これが効率性追求マネジメントの特徴で確実に結果を出せることが多い。

一方、効果性の追求は目先の結果を担保できないことが多い。営業人員はそのままで売り上げ拡大を達成することは、お客さんの動向に左右され確約できないからだ。

効率性の追求は目先の結果を担保できるので、効率性と効果性のマネジメントのどちらかの立場の管理者や経営者が議論すると、結果を担保できない効果性追求のマネジメントは議論では分が悪い。つまり、「それで売り上げ拡大は確実にできるのですか?」の一言に、根拠をもって反論するのは難しいからだ。

ここで気をつけなくてはいけないのは効率性の追求だけをやっていては、新規のお客さんや引き合い・相談件数や情報量が少なくなり、営業の役割である明日の糧を得ることが難しくなってしまう。つまり、世俗的な言い方をすれば「ジリ貧」になることが多い。

そのことを営業と重なるマーケティングで考えてみよう。マーケティングの基本であるマーケティングミックスの4P*1)のProduct(商品)について自社に当てはめて振り返ろう。多くの企業では売り上げが大きい順に商品を並べてその売上高構成比を累積すると、たいていの企業では売上高上位2割の商品で売り上げの8割となる。一般的に2:8の法則(*2と言われるが、上位2割+αの商品に的を絞り効率化をすると売上高は、ほぼ維持でき収益は劇的に改善する。しかし、ほどなく売り上げは「ジリ貧」となる。お客さんから見て品揃えに飽きてしまい魅力がなくなるからである。かつて持てはやされた「選択と集中」という、効率性の追求をやり過ぎた場合に起きがちな弊害である。

 

―――――

*1 4PProduct=商品、Price=価格、Place=販売チャネル、Promotion=販売促進の略

*2 パレートの法則とは、「28の法則」、パレートの法則とも呼ばれる。 顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげているという法則のこと。売り上げに限らず生物の世界でも働きアリの2割はよく働くが残り8割はそうでもないが、働くあり2割だけを選んでもまた2:8に分かれる。優秀な社員と普通の社員も同じような傾向があると言われる

 

 営業プロセスを振り返る

扱う商品やサービスの特徴、例えば消費財(BtcC*3))か生産財(BoB*4))かにより営業活動は異なるが共通する部分も多い。加工食品や家電などの消費財では消費者が最終のお客さんであるが、消費者との接点となる小売企業(Business)との商談は欠かせない。

初めに営業プロセスを振り返ってみよう。まずに潜在顧客への告知活動(広告や広報などの情報発信)、見込み客からの引き合い・相談、何度かの商談(何度かの提案、クロージング)、納品検収、そしてアフターフォローがある。さらに、これらの一連の営業活動を支える、組織としての仕組みづくりや顧客データベースの維持管理などがある。

営業のどの段階においても、効率性と効果性の追求のバランスが大切なことは言うまでもないが、プロセスによって効率性の追求がより重要である場合とそうでない場合がある。

 

―――――

*3 Business to Consumerの略で企業などの法人と消費者の事業で、消費財が多い

*4 Business to Businessの略で企業など法人と法人の事業で、生産財が多い

 

 効率性と効果性追求、バランスよく

情報発信・告知活動の効率化、つまりヒト・モノ・カネの経営資源の削減を行っても直ぐにはその影響はないが、新規の引き合いや相談が徐々に減ってしまう。その意味で効率性だけを追求するのではなく、無駄に見えても情報発信・告知の営業投資は続けるべきである。

引き合い・相談、そして商談。筋のよいお客さんを見極めることは営業活動の肝だがそれを客観的に見極められるスキル持つ営業パーソンは残念ながらそれほど多くない。売り上げに直結しそうな、見込み客や現在のお客さんだけを相手にし続けると効率性は上がる。しかし、新規のお客さんが増えず既存のお客さんが少しずつ減る「ジリ貧」になるので、無駄に見えても効果性の追求、つまりお客さんの拡大を目指す投資を継続したい。

また、実際の商談において一見時間の無駄に見える雑談でのふと漏らした一言によりお互いの信頼感を醸成し、次のビジネスにつながるチャンスに出合うこともある。

納品検収はできるだけ効率よく確実に行う効率性の追求を徹底できるプロセスである。また、アフターフォローはお客さんとの関係を維持するために、効率性追求によってコストパフォーマンスよく今日の優良顧客だけに絞らずにフォローを続けたい。営業の仕組みづくりや顧客データベースはできるだけ効率よく進めることで、組織としての営業力強化につながり、営業プロセスのあらゆる面で効率化追求の基盤となる。

 

 おわりに

営業活動は明日の糧を得るのが使命である。マネジメントの2つ面である効率性と効果性、効率性の追求は目先の結果が見えるだけに強いが、それを追求し続けると「ジリ貧」を招く。管理者や経営者の立場では2つのバランスを極限まで追求することが求められる。

 

 

 

青森中央学院大学教授

塩谷 未知

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

 営業マネジメントの再構築

01060137

 

 

 経営者が行う営業活動の意味と勘所は

20150928

 

 

 営業活動の自己点検

20110875

 

 

 業績向上の方法/属人的営業を捨て組織力を活かす

20170789

 

 

 

 

 

 

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