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No.265 JRS メール配信サービス(2022.05.30)

JRSメール配信サービス発行

 

 

いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。

 

企業経営を長く続けていると、様々な危機や環境変化に見舞われることがあります。東日本大震災といった自然災害だけでなく、コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵攻といった想定外の事態による影響が企業活動に降りかかってくる時代になりました。

今正に資源価格の高騰や急激に進む円安など、企業経営に影響を及ぼす環境変化が起こっています。

このような激しい環境変化に対応していくためには、企業はどのようにしたらよいのでしょうか。

そこで今回のメルマガは「環境変化に負けない強さ(レジリエンス)を身につける」と題して、環境変化に負けないための日頃の備えについて、元青森中央学院大学教授でコンサル経験も豊富な塩谷未知氏に解説していただきます。

 

 

 

環境変化に負けない強さ(レジリエンス)を身につける

 

 

 

戦後の高度成長期の一時期を除き、よい時もあれば悪い時もあり、同じ業界でも好調な企業とそうでない企業があることが普通。企業内外の環境変化によって苦境に陥ることはままあることで、そのようなときに社内外の力により再び立ち上がることができるのが、逞しい企業でありよい企業である。生き残っている企業は何度もそのような困難を乗り越え、その節目ごとにより逞しく優良になっている。

環境変化により企業が苦境に陥る、そのときに不幸なことに倒産するか、再起するか。苦境からの復帰に長けていることは、一般的にレジリエンス(resilience)と言われる。

 

 レジリエンスとは

最近話題になっている「レジリエンス」について触れる。「レジリエンス」は「復元力、回復力、弾力」などと訳され、「困難な状況にあっても、しなやかに適応して生き延びる力」という心理学的な用語が起源である。同じ困難に遭遇しても、心理的ダメージから回復する人とそうでない人がいることは誰しも肌感覚で理解している。

レジリエンスの概念は個人だけでなく企業や行政などの組織・システムまで広く適用され、社会のあらゆる場面で備えておくべきリスク対応能力・危機管理能力の大切な資質の一つとして関心が持たれている。

つまずいたり転んだりしたとき、もう一度立ち上がることができる、このことは個人に限らず企業にとっても大切なことである。経営が苦境に陥っても、社内外の信頼の多様な縁(ネットワーク)による力を集めることで再起できるように日頃から備えておきたい。

 

 多様性の発掘と維持

社内外環境の大きな変化に適応できず経営難に陥る。そのときの再建策はそれまでと同じ経営戦略や施策では難しく、それまでにはなかった経営戦略や施策に、思い切って挑戦することで突破口が開けることが多い。

それまでと同じ経営者やリーダーが思い切った挑戦ができるだろうか。あるいはそれまで経営者を支えてきた番頭さんのような存在の人に経営革新ができるのだろうか。イエスマンだけの社員の中に、果敢に変化に挑戦できる人材が存在するのだろうか。

人材が豊富な大企業なら、主流ではない事業部門や子会社などにそれまでの経営者とは毛色の異なったリーダーとしての資質のある社員がいるかもしれない。しかし、人材に恵まれていない中小企業ではそのようなことは可能なのか。

困難に陥った際に環境変化に柔軟に適応するためには、社内にいろいろな考えや価値観を持つ、信頼できる多様な人材を抱えていることが求められる。その人は必ずしも経営者の近くにいるとは限らないが、人材が少ない中小企業ではそのようなことが可能だろうか。

その解決策の一つは経営者個人の中に多様性に富んだ考えや価値観を持つことである。例えば、利益至上主義という価値観だけでなく、社会との共存という価値観を併せ持つのである。社内外の変化や苦境に陥ったときに、それまでとは異なった価値観により、新しい経営戦略や施策に柔軟に挑戦するのである。

社員に関しても、自分の中に多様な価値観を持つ社員を大切に育てる。そのために有効な方法の一つは、自社の歴史にある多様な価値観を発掘し共有するのである。もちろん、同時に先進企業に学び、地域社会活動や取引先などのステークホルダー(利害関係者)との幅広いおつき合いも、経営者本人や会社の中に多様性を維持するために有効である。

10年、20年という歴史のある企業なら創業前、創業期、成長期、低迷期、経営危機期、成熟期などのいくつかのステージを経験している。そのステージごとに異なった価値観のもとで経営を行っていたはずであると同時に、思った以上に多様な経験を積み重ねている。

「こんな生き方があるのか」、「こんなやり方があるのか」と、異なった価値観や経験を社員とともに発掘し共有するのである。自分たちの会社のことなので、いろいろなできごとの背景やその過程、結果について身近に多面的に理解できる。その発掘し共有した多様性は社内外での環境変化により会社が苦境に陥ったとき、あるいは好調のあまり暴走しそうなときの経営の是正に役立つことが期待できる。

 

 フェアな日頃のおつき合い

定期的とは言い過ぎだが製品や検査に偽装や不正が起きる。同じ問題を起こしても、そのダメージは軽微で、立ち直るレジリエンス力のある企業と倒産に至る企業に分かれる。

レジリエンス力のある企業に共通しているのはフェアであることである。取引先(仕入れ先、協力会社、お客さん)、社員、株主、社会などステークホルダー(利害関係者)との関わりがフェアで、隠しごとがない「見える化」がより徹底されていることだ。

社員を消耗品のように扱い、取引先には激しいコストダウンだけを要求し、お客さんに不正なことをしたりしていては問題やトラブルが起きたときに誰からも見放される。実際、日頃から取引先に対し優越的地位の利用を徹底してやっている企業は、問題発生の瞬間、取引先は離れてしまうのでその企業が再び立ち上がることはできない。レジリエンス力が欠落しているわけだ。

このことは10年ほど前の2011年東日本大震災時にも観察された。日頃から仕入れ先に対し買い叩くなどアンフェアな取引をしていた小売店の品揃えの回復は、日頃からフェアな取引をしていたお店に比べて遅れがちであったというのは、うがった見方だろうか。

 

 おわりに

変化に対応し苦境に陥っても再び立ち上がることができるためには、企業の中に多様な才能やスキル、経験をもつ社員を抱え、日頃からコミュニケーションやどんなことでも言いやすい雰囲気を維持し、お互いに信頼感を醸成することが大事である。

中小企業の場合は人材に限りがあるので、経営者や社員個人の中に多様な価値観を持ち続ける、そのためには多様な経験をしている自社の歴史を振り返ることから始めたい。

社内外に多様な信頼の縁(ネットワーク)を維持する、そのような信頼の多様な縁(ネットワーク)が環境変化に適応するために大事なことである。経営が困難に陥っても信頼の縁がレジリエンス力を生み出し、会社を一段と逞しくし、次のステージに移ることを推進する。

 

 

 

株式会社アイベックス・ネットワーク 委嘱コンサルタント

(元青森中央学院大学 教授)

塩谷未知

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

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情報番号

 

 

 強い会社とは何か

20150926

 

 

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01030154

 

 

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 経営とはどういうことか

20110025

 

 

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