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いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。
前回のメルマガでは、環境変化に負けないために日頃からどのような備えが必要かを見てきました。様々な危機や環境変化に見舞われる企業が生き残っていくためには、日頃の備えと共に、それらにいかに対応していくかにかかっています。 外部環境の変化に対応していくことが重要であることは分かっていても、実施した対応策が間違っていては意味がありません。 そこで今回のメルマガは「外部環境に振り回されない軸足経営」と題して、生き残るために外部環境の変化にどのように関わっていけばよいか、元青森中央学院大学教授でコンサル経験も豊富な塩谷未知氏に解説していただきます。
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外部環境に振り回されない軸足経営 |
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環境変化に適応した者が生き残るのが生物の特性である。企業と環境との関係は、生き物に例えられることが多く、企業は環境変化に適応し生き残る環境適応業とも言われる。環境は企業の中の内部環境と企業の外の外部環境の2つに分けられ、そのどちらの変化にも適応することが存続し続けるためには不可欠である。 外部環境はお客さん、取引先、業界、そして市場などの身近なこと、社会、政治や経済、技術、グローバルなどのより大きな枠組みのものがある。 ここでは身近な外部環境と企業との関わりについて一緒に考えてゆきたい。
■■ 平成バブル景気に振り回され懲りたこと 外部環境に振り回された最悪の記憶は、今から30年以上前の平成バブル景気だろう。現在第一線にいるビジネス人には実感が湧きにくい昔話かもしれないが、バブル経済に振り回され苦境に陥ったり消えたりした企業や個人は数知れない。 持て余すぐらいにお金が社会に溢れ、株価はどんどん上がり、日経平均株価は4万円に近づき不動産バブルは極限まで進んだ。不動産価格は下がらないという土地神話は健在、お金を寝かすのは罪悪という社会や経済、そして同業者からの善意の圧力という外部環境に振り回された。山林を所有している企業は、例外なくゴルフ場かスキー場をつくるか計画をするという有り様。人材採用も積極的で同業に負けるなと、大量採用に踏み切る企業が多かった。 社会や経済の高揚感、同業もやっているから出遅れるなと、たいていの企業は外部環境に振り回された。平成バブル景気が破綻したときには3つの過剰、つまり人材(ヒト)・設備(モノ)・債務(カネ)を抱え悩まされると同時に"懲りた"企業が続出。その後始末に時間がかかり、その後続く「失われた10年」、「失われた20年」、ついに「失われた30年」の今に至っている。 平成バブル景気に対応できず、あるいは意思決定に手間取り、バブル景気の波に乗り損ねた企業が、経営の健全さを保ち、生き残っている事例が思いのほか多いから皮肉なものである。そして、外部環境に振り回されることがその後も続く。 平成バブル景気時代の過剰投資の処理に苦闘していた企業の経営に、強いインパクトを与えた経営戦略が、2000年代に入り日本の企業の間で流行り出した。米国企業で成功を収めていた「選択と集中」戦略である。得意な事業を選択し集中することで収益を上げる戦略である。わかり易いこと、すぐに成果を出せることから多くの企業で事業のリストラ、それに伴う人員削減を実行した。 「選択と集中」という効率化追求の戦略は必ず成果が出るが、それをやり続けた企業では多様な経営資源は次第に無くなり、未来を見据えての施策を打てなくなった。同業者もやっている、先進企業もやっていると、流行りの戦略という外部環境に振り回されたわけだ。
■■ 営業とマーケティング 身近なところで外部環境との関わりを思い起こしてみよう。営業とマーケティング、日本企業の営業は守備範囲が広くマーケティングと重なる部分も多い。ここでは販売により近い活動を営業と捉え、古典的なマーケティング・ミックスの4P(Product=商品、Price=価格、Place=販売経路、Promotion=販売促進)全体を統括するのをマーケティングと考える。 極論すれば営業活動は毎月の売り上げで管理される。その結果短期志向になりがちなので、同業他社やお客さんの動向という目先の外部環境に影響されやすい。営業の現場からは、「ライバル会社はこんな商品を出した。うちも出さないと負けてしまう」、「お客さんからこんな商品が欲しいと言われた」、などの意見が出てくる。営業が強い企業では後追い商品企画と品揃えがマーケティング部門の役割となってしまい、マーケティングの肝であるP(商品)のラインアップ(品揃え)に本来あるべき揺るぎないコンセプトが無くなってしまう。 お客さんやライバル企業という目先の外部環境に振り回されると、企業の生命線であるお客さんとの新価値の創造ができない後追い商品が多くなる。ブランドイメージが棄損するだけでなく、品揃えは十分にはあるけれども売れない・儲からない、そうなってしまう。
■■ 半歩遅れる外部環境追随 環境変化に遅れないことは生き残りに大切であるが、目先の環境変化に追随すると半歩遅れになり振り回されることが多い。まして先行するライバルの動きを見ながらの対応は、当然のことながら何歩も遅れてしまい、対応できたときには市場はピークを過ぎている。 昭和の時代、大企業は自前のチャネルを持ち、ライバル企業への追随戦略が成り立ったが、インターネット販売が盛んになり、系列店が崩壊しチャネルの壁がなくなった現在では成り立たない戦略である。もちろん、商品のライフサイクルの長さも後追い戦略を可能にした。 新しい商品やサービス、販売方法などをお客さんに提案し、一緒に創造し続けて初めて企業は生き残れるもの。しかし、お客さんは自分で何が欲しいのかわからず、欲しいものを具体的に表現できない。お客さんの立場に立って役立つものを想像し、それを自社の商品やサービス、システムで表現し、お客さんに提案し続けるのがマーケティングの本質である。 お客さんや業界、ライバル企業の変化を知り変化に遅れないことは大事である。しかし、それ以上にお客さん目線でお客さんを常に観察し、お客さんに役立つことを大切にし、それを軸足に半歩先の提案をし続けることが、生き残り続ける上で最も大切なことである。
■■ おわりに 成熟化、ボーダーレス化、デジタル化が時代の大きな潮流(メガトレンド)、そこに10年ごとに大きな危機が加わる。1970年代始めの石油危機、円高の急激な進行、平成バブル景気と崩壊、リーマンショック(金融危機)、東日本大震災、新型コロナウイルス感染によるパンデミック、そしてロシアのウクライナ侵略とそれにともなうエネルギー危機、ここ半世紀を振り返ってもおおよそ10年に1度は深刻な危機に見舞われている。 大きな潮流を押さえつつ、自分たちの会社の公正さ(フェア)を保ち、お客さんにとっての役立ちという存在意義(パーパス)や事業領域(ドメイン)に軸足の一つを置きながら、お客さんの目線で環境変化を観察し、新しいビジネスチャンスに挑戦し続ける。軸足の一つは存在意義や事業領域に置き続け、外部環境に振り回されないのが生き残りの肝である。
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株式会社アイベックス・ネットワーク 委嘱コンサルタント (元青森中央学院大学 教授) 塩谷未知 |
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なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。
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関連情報 |
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JRS経営情報(PDFサンプル)
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情報番号 |
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◆ 事業再構築の鍵は、自社の"強み"の再発見 |
20210430 |
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◆ 自社の存在価値を高め一層信頼される会社を目指そう |
20100405 |
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◆ ドメインの確立 |
20110028 |
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◆ 我が社の強みを知り強化して機会を最大限に活用する |
20100374 |
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◆ 意志決定・伝達のスピードと質は生き残りに必須の組織能力 |
20100587 |
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