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No.269 JRS メール配信サービス(2022.09.26)

JRSメール配信サービス発行

 

 

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コロナ禍で在宅勤務・テレワークなど従来と異なった働き方を経験したこともあり、企業側も働く側も仕事に対する考え方が以前と変わってきたように感じられます。

従来の日本での就職は、文字通りの「就職」ではなく、特定の会社に入って仕事をする「就社」の意味合いが強かった。そのベースにある終身雇用や年功序列といった、日本型の雇用制度が揺らぎ始めている最近の環境変化や働く人達の意識の変化もあり、正に職に就く形の「ジョブ型雇用」が注目されています。欧米では、主流の制度ですが、ようやく日本でも導入する動きが広がりつつあるようです。

そこで今回のメルマガは、「ジョブ型雇用の動向」と題して、イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属の中小企業診断士、生田康二氏にジョブ型雇用の最近の動きについて解説していただきます。

 

 

 

ジョブ型雇用の動向

 

 

 

従来の日本型雇用形態の特徴として、年功序列、終身雇用などがあるが、こうした制度に変革が求められている。

ビジネスのグローバル化や外国人労働者の増加、ダイバーシティーの普及、ライフスタイルの多様化などを背景として、我が国の労働環境は大きく変化している。このような変化に対応するため、短時間での労働や勤務地・職務を限定した制度など多様な雇用形態が不可欠となっている。

 

そのような環境変化の中、近年、職務(ジョブ)を特定して正社員の雇用契約を締結する、欧米では一般的な「ジョブ型」の雇用や人事制度が、国内企業においても注目されている。ジョブ型への対比として、職務の定めのない、企業内でのメンバーシップの維持に重点を置いた従来型の日本型雇用形態を指す「メンバーシップ型」の用語も定着してきた。

 

このジョブ型とメンバーシップ型の2類型は、濱口桂一郎氏(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長)が、著書「新しい労働社会-雇用システムの再構築へ」(岩波新書 2009/7刊行)などで概念を整理し、命名したとされている。

 しかし、ネーミングとしては新しいものの、歴史的に見ると、ジョブ型に相当する雇用制度は国内の労働市場で決して目新しいわけではない。高度経済成長期にメンバーシップ型が定着するまでの日本の雇用は、いわばジョブ型志向であり、むしろジョブ型のほうが古い概念と言える。

 

1990年代以降、グローバル化をはじめとする事業環境の変化の中で、新卒一括採用、長期・終身雇用や年功型賃金を前提とする雇用制度の限界が顕在化するようになった。

2000年前後には、成果型賃金導入のブームもあったが、結果的には雇用の流動性を高めるまでには至らなかった。

そして今回、20203月以降の新型コロナウィルス感染拡大によるテレワークの進展も相まって、大企業を中心にジョブ型雇用を導入する企業が相次いでいる。

 2022年になってからは、日立製作所や富士通などがジョブ型雇用の適用対象を管理職から一般社員へ拡大するなど、今や一大ムーブメントの観がある。

 厚生労働省の労働政策審議会においても、ジョブ型雇用の広がりを受け、企業に対して、将来の勤務地や業務内容を従業員に明示するよう求める方向で議論が進められている模様である(2022/8/31日経新聞)。

 

メンバーシップ型の基本思想が「適材適所」であるのに対して、一方のジョブ型はいわば「適所適材」である。

企業側から見ると、人材確保の自由度が高まり、余剰人員も抑制できる一方で、社員の帰属意識や協調性が低下するリスクも内在している。社員間の「あうんの呼吸」や暗黙知に依存したコミュニケーションが成り立ちにくくなるため、専門職務を特定した上で、「三遊間のゴロ」を捕りにいかせるチームワークの醸成が課題となる。

 社員側から見ると、専門性が高報酬で評価される可能性が高まる一方で、低パフォーマンスにはポストオフの処遇が伴う。自ら能動的にキャリアプランやスキルセットを組み立てていく自律性が求められてくる。

 本年96日に公表された「令和4年版 労働経済白書」においても、まさに「労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題」と銘打った分析がなされている。

 

ジョブ型雇用の適用施策や導入形態・プロセスは各社さまざまではあるが、全体的には、欧米型の完全コピーというよりは、メンバーシップ型のメリットを活かしながら、「日本流のジョブ型雇用」を志向している傾向が見られる。

ジョブ型も本来は雇用の一手法に過ぎず、当然、組織の課題を瞬時に解決できる魔法の杖にはなりえない。ジョブ型雇用の仕組みが経営戦略や企業風土に適合する企業もあれば、そうでない場合もある。流行り言葉や二者択一の論調に流されず、何の課題を解決するための取り組みなのか、本質的な議論が不可欠である。

 

 

 

イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属

中小企業診断士 生田康二 

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

 ジョブ型雇用とは何か、その導入手順

20210257

 

 

 ジョブ型雇用の動向

20210378

 

 

 これまでの働き方、これからの働き方

20200556

 

 

 「タスク」中心のチームづくり

20210260

 

 

 部下が「在宅」「出張」しても問題ない

20210263

 

 

 

 

 

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