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今回は、古代中国の書籍である「武経七書」から、現代の経営に役立つ情報を学ぶシリーズの2回目です。 前回のメルマガでは、基本編として、そもそも「武経七書」とはどのような背景で書かれたものなのか等を解説していただきました。 今回から各書の具体的な内容に入っていきます。まずは、七書のうち、古代中国の代表的な兵法書である「呉子」と軍事関連の規定や戦争を行ううえでの心構え等をまとめた「司馬法」です。両書から導き出される現代の経営に役立つ情報について、イー・マネージ・コンサルティング協同組合所属の中小企業診断士、米倉早織氏に解説していただきます。
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「武経七書」を活かした経営戦略 第2回(呉子・司馬法編) |
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1.「呉子」の成り立ち 「孫呉」と呼ばれるように「孫子」と共に古代中国の代表的兵法書であり、戦国時代(B.C.403~221)初期の衛出身の呉起の言説を記したものである。呉起は強兵の前提として 「政治の刷新」 を掲げ優れた業績を残した。 呉起は魯の国で、斉の攻撃を受けた際に総司令官として撃退、その後、文候(在位B.C.445~396)が広く人材を集め 「政治の刷新」 を進めていた魏に移り、要衝の地である西河の太守で素晴らしい実績を上げる。これが出来たのは、兵士の心を捉えてやる気を引き出す努力を惜しまなかったからである。その後、悼王(在位B.C.401~381)が 「国政の刷新」 に乗り出していた楚に移り宰相として、法体制の明確化、不要不急の官位廃止、三晋(韓・魏・趙)・秦等諸国を撃退・併合する等、多くの業績を上げた。
2.「呉子」のポイントと現在の経営戦略 ①事前に諸国の優れた点や劣っている点等を研究し、それを基に作戦計画を立てる 2代目武候の魏の時代、周辺6ヶ国の国民性、財政、政情、君臣・賞罰・軍隊の状況、地形等について分析し、原則に拘らず各国情に応じた作戦を解説している。そして、優れた勇士の選抜と特別待遇を普段から行う事と、その家族も手厚く待遇する事も説いている。 現代においても、競合他社の顧客種別の変化や売上の増減、新製品の特長と狙い、研究開発状況、経営者の経営手腕、社員の待遇・教育等、総合的な分析が必要である。
②各兵士の能力・条件を明確にして、それに合った任務・役割を与える 斉の桓公、晋の文侯、秦の穆公による人材の識別と諸国を破った例を挙げている。その中で、胆力・気力が優れた者を集めて一隊を編成し、死を恐れず奮戦して勲功を立てたいと願う者を集めて一隊とすることに加え、左遷・失脚した高官で、功名を立てて返り咲きたいと願う者や、城を捨てて退却した将兵で汚名返上の機会を狙っている者を集めて一隊とする事も唱えている。 特に日本の大企業においては、1回の失敗でも復活できず転職か腐り続けさせる人事が多いようであるが、何をすればどう間違うのかを身をもって把握した人材は貴重であるので、排除せずに士気を高め再度挑戦・貢献してもらう人事も重要かと思う。
③常に士気の高揚と物資補給を心掛け、物心両面に余力を蓄える 兵士をやる気にさせて、その自発性を引き出すために、功績の内容に応じて褒美に差をつける事に加え、功績がなかった者についてもそれを排除しなかった。また、戦死者の家には毎年使者を送り家族を労い、いつまでも心に掛けている事を示した。 経営者は、社員から信頼・尊敬されて、指導を受けたい、一緒に仕事をしたいと思わせる人間性を備えると共に、社員とその家族を含む人の心も把握している必要がある。その為にも、功績がない社員にもチャンスを与え企業に貢献して自信を付けてもらうと共に、その家族も大切にする思いを示すことで、社員は安心して日々の業務に打込めるのである。
3.「司馬法」の成り立ち 「司馬」とは軍事行政官名で、夏(B.C.2070頃~1600頃)以前の堯・舜時代にはあったと言われ、周(B.C.1046頃~256頃)では「大司馬」と呼ばれた。戦国時代の斉の威王は、重臣に従来の「司馬の兵法」について議論をさせ、そこに司馬穣苴の兵法を追加させて 「司馬穣苴の兵法」 と名付けた。 春秋時代(B.C.770~403)末期の斉(景公王)が燕と晋から侵略された際、将軍として撃退したのが司馬穣苴であった。勝利のポイントは以下であったと言われる。 ・景公王の寵臣の荘賈が集合時間に遅れ、軍法により斬罪に処した(規律遵守) ・一般兵士の食住の世話や病兵の手当等の率先垂範、自己給与を兵士食糧に充当 ・結果、全軍綱紀が引締まり、兵士の信頼を集め率先して戦おうとした
4.「司馬法」のポイントと現在の経営戦略 ①組織に対する締め付けは、厳し過ぎても緩やか過ぎても良くない 締付けが強いと兵士は委縮し、緩めると統制が取れなくなる。為政者が人民を押さえ付け過ぎると各々の位に安ずることが出来ず、技能も有効活用できず、牛馬飼育も満足にできず委縮してしまう。逆に緩めれば人民が管理を侮るようになるだろう、と説いている。 現代においても、締め付けが強く社員が常に評価を気にしていると、出来ることのみ目標に設定したりして、組織の活性化が削がれてしまうであろう。逆に自由にやりすぎると、売上等の目標が達成できなかったり、礼儀・モラルが低下したりするであろう。 各事業領域における自由度のレベル、行き過ぎた場合の対処を決めておく必要がある。
②開戦には、天(好機を掴む)、財(人民に衣食住を保障)、善(普段からの訓練・準備) 現代、競合他社に勝つ為には、緻密な分析とそれに基づき好機を掴むだけでなく、緻密な戦略立案や、社員の適切な待遇や教育・訓練が必要である。しかし、社員に長時間残業を強いて十分な手当ても出さないと、社員は衣食住レベルを落とすことになり心身は疲弊して結局企業の利益にならない。これでは企業の永続性は保証できないだろう。
③常に統制を維持し将兵の心を一つにして敵に臨む ・勝利の為には、全軍指示は3日以内、部隊指示は半日以内、個人へはその場で徹底する。また旺盛な士気を持ち強い決意で戦い、優れた装備を持つことが必要と記している。 情報の迅速な共有が行われず淀みがあると、現場では上位の考えが分からず勝手に行動してしまい、企業の総合力が低下するかもしれない。 ・人間の気質は地方・州により異なる。このような様々な人々を組織として纏めていく為には、「道」が必要で、これは人間として踏み行うべき道である、と記している。 現在、出身地や文化も好みも異なる人々と仕事を行う際には、お互いに「多様性」を尊重し受容する事が必要である。海外から多くの人が学び、働き、住むためにやって来るが、日本の文化や言葉が特殊と思い込まず、相互理解の努力の継続が組織の強みとなり、企業の発展にも結び付く。
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イー・マネージ・コンサルティング協同組合 中小企業診断士 米倉早織 |
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なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。
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関連情報 |
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JRS経営情報(PDFサンプル)
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情報番号 |
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◆ 武経七書を活かした経営戦略(基本編) |
20210371 |
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◆ 武経七書を活かした経営戦略(呉子編) |
20210372 |
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◆ 武経七書を活かした経営戦略(司馬法編) |
20210373 |
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◆ 優れたリーダーの要件 |
20140457 |
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◆ 最強のリーダー養成カリキュラム「四書五経」の概要 |
20140459 |
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