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No.279 JRS メール配信サービス(2023.07.31)

JRSメール配信サービス発行

 

 

いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。

 

企業経営を行っていると、何年かに1度、経営に影響を与える想定もしていなかった危機に遭遇します。東日本大震災や豪雨被害などの天災のほか、リーマンショック、古くはオイルショックなどの経済危機、最近では新型コロナやロシアのウクライナ侵攻など数々の危機が訪れ、それらを乗り越えた企業が生き残っているわけです。

そこで今回のメルマガは、「自社の歴史で発掘する『真の強み』」というテーマで、企業の持つ『真の強み』について、コンサル経験豊富な元青森中央学院大学教授の塩谷未知氏に解説していただきます。

 

 

 

自社の歴史で発掘する『真の強み』

 

 

 

企業の歴史を創業時から資料やインタビューによって紐解く。企業が存在し続けている価値や飛躍のキッカケになった節目を見つけ、「ああでもないこうでもない」と雑談する。その雑談をベースに、企業理念、企業ドメイン(事業領域)やビジョンを企業経営者と一緒になって考える機会に恵まれてきた。

そのときに何と言ってもワクワク・ドキドキするのは、「できそうもないことができるようになった」事実に出合うことである。

例えばこんなことだ。

ISO関係の資格取得が必要になったものの、担当できる社員はいなく、文章を書くのが苦手な社員ばかり。ところが不思議なことに社員がみんなで"もがいている"うちに、なんとか資格を取得し、しかも自力で資格維持ができるようになった、弱小零細企業の奇跡。

経営分析のありふれた手段であるSWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析、「自社の強みは何ですか」とお気楽に問い・問われることは多い。今の会社にできることが強みではあるが、自分たちの会社の「真の強み」に気づくには、少し深くこれまでとは異なった目線で自社を見つめる必要があるというのが、最近の実感である。

 

自分たちの強み探し

 自分たちの強み探しは、ヒト・モノ・カネ・情報、商品・サービスおよびサプライチェーン、そして管理の視点で見出すことが多い。その強みは見える場合もあるしそうでないこともある。お金や商品・サービス、お客さん、技術などは「見える」強みであり、信用・信頼などの企業文化、存在感、情報などは「見えない」強みである。

 それらは、今できる・持っている強みである。

 経営コンサルタントして長い間活動しているが、多くの企業経営者と自分たちの歴史を紐解きながら強く感じたこと。最近では2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2020年からのコロナ禍、2022年からのロシアによるウクライナ侵略、同様の大きな危機は10年に1度くらい起きている。

 生き残っている企業は、世の中の危機だけでなく、自社の不祥事や事故・事件、商品・サービスの陳腐化による経営危機など、何度も乗り越えている。世の中の危機と会社の経営危機、何度も乗り越えた経営者はタフであることに、ある時気づいた。何が起きても狼狽(うろた)えることなく、どんと構えている。

 それは「真の強み」の1つ。

 

自社の歴史に発掘する「真の強み」

 経営者と会社の歴史の棚卸しをして簡単な社史や年表にまとめる。それを材料に社員と歴史の中のできごとを「なぜ、どうやって」と考え、社員と経営者が会社の歴史を共有(シェア)する。その結果、会社への愛着が強まり、「できそうもないことができるようになった」という「真の強み」に気づく。

 その1つを紹介しよう。

 その企業の社歴は30年弱、現社長のお父さん(現顧問)が創業した。食品の仕入れ販売という卸売業からスタート、その後仕入れ先や売り先とのおつき合いの中で、地域での卸売業に限界を感じ食品製造業に参入した。卸売業にとって難易度の高い食品製造業であるが、苦しみながらも社員と"もがき"続け、今日では食品製造業として地域では一目置かれる。

 社員の皆さんとともに、新規参入の背景と目的、その成功する過程、どのように原材料調達、製造、販売、品質を含む管理などの技術やノウハウを得たか。創業者である顧問や当時を知っている先輩たちにお話を伺い、当時の同業他社の社史などを参考に考察した。

 社員を地域外の食品企業に派遣し、食品業界経験のあるベテランを顧問として迎え、なんとか食品製造と販売にこぎつけた。

 社員の皆さんとともに学び気づいたのは、食品製造業という「新事業」に挑戦し自分たちの強みにする、その習得過程が「真の強み」であること。今できる「強み」ではなく、「できるようになった過程」が「真の強み」である。

 その後、工場移転や新設、新しい設備の導入、新しい管理システムの導入定着など、ある意味で「新」に挑戦してできるようになった過程について共有し多くのことを学んだ。

 

世の中の変化に対応できる学ぶ力「できそうもないことができるようになる」

 何が起きるかわからない現在。

 コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵略とエネルギーや食品、サプライチェーンの大きな変化、生成AIに象徴されるデジタル技術革新の加速、消費者ニーズの質的変化、想定外の大きな変化が起きている。

 これらの断続的変化を乗り切るには、今できるかに加えて、どのように新しいことや困難に挑戦し自分たちの強みにしたか、その習得・学習過程(「真の強み」)が役立つ。

 今できることは早晩陳腐化する。今できることを研ぎ澄ましながら、新しいことを組織的に学び続けるという、自分たちが持っている「真の強み」を再認識し活かし続けたい。

 

おわりに

古来、流浪の民と言われるユダヤ人は教育熱心であることが知られ、中華圏の客家(注)の人たちも同じように言われている。それは何が起きても、資産を失っても何とかなるという経験と知恵からきていると言われている。

個人のレベルでは学習習慣の差が社会的階層につながり、学習習慣のある人の社会的成功確率が高い、という事実がある。

会社が今日存在するのは数々の困難を克服したからである。困難を克服するため組織として学習した過程(「真の強み」)が厳として存在する。この強みは自分たち独自のものであり、他社は真似することはできない。「できそうもないことに挑戦しできるようになった」、その組織的習得・学習過程こそが自分たちの「真の強み」に値する。

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(注)客家(はっか):戦乱から逃れるため中原から南へと移動、定住を繰り返していった。よそ者の意味合いもあり、中国のユダヤ人とも言われることがあり教育熱心である

 

 

 

株式会社アイベックス・ネットワーク 委嘱コンサルタント(元青森中央学院大学 教授)

塩谷未知 

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

 事業再構築の鍵は、自社の"強み"の再発見

20210430

 

 

 外部環境を分析し経営資源の棚卸しを行う

20061969

 

 

 事業承継3/事業承継計画の策定方法

20170772

 

 

 戦略的につくろう!会社を変える社史・周年史

20180179

 

 

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