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事業活動を行っていくうえで、取引先との交渉は欠かせません。古い固定先としか取引していないので、営業担当者はいないという企業も、取引条件などは取り決めているはずです。 企業を存続、成長させるために必要な売上げを確保し、利益を得るためには、取引先との交渉が大変重要になってきます。その巧拙は将来に渡って企業経営に影響を与えることになります。 そこで今回のメルマガは、「営業現場の交渉力の強化について」というテーマで、コンサル経験豊富な元青森中央学院大学教授の塩谷未知氏に解説していただきます。
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営業現場の交渉力の強化について |
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古きよき昭和の時代の営業人といえば、当時流行ったサラリーマン映画のシーンが思い出される。口八丁手八丁で相手を言いくるめる、相手が辟易するまで夜討ち朝駆けで何度も押しかける、そして接待攻勢、情に訴える・おだてる・ゴマをする、阿吽の呼吸で「今回はうちが"泣きます"が、次回は」というなれ合い、今でいうところの優越的地位の濫用、などいろいろな交渉場面が。 サラリーマン映画では、営業は非科学的であり義理人情の価値観が強調されていたが、令和の今の時代とは大きく異なっていた。昭和の時代は経済が成長していたおかげで楽観的で、とても大事なことだが取引先同士が長期的思考で良い意味で相互依存があった。 営業の現場では、良くも悪くも営業人や営業部隊の社内外での交渉力がとても大事、会社全体の浮沈に関わるとは大袈裟過ぎるだろうか。 書店に行くと「交渉術」関係の定番のビジネス書がいくつか常備されている。それなりに一読の価値があるものの、交渉というのは「交渉術」のハウツー本を読んだだけでは身につきそうもないようだ。交渉の難しさは、一流の人が関係する政治の世界や停戦交渉の難しさ、大企業同士の提携交渉の有様を垣間見ることによって実感する。
営業現場における交渉力とは 営業現場における交渉は、広義には折衝、協定、取引の際の話し合いなど多岐にわたる。交渉は、自分が譲歩する・しない、相手が譲歩する・しない、など、いろいろな立場がある。どの立場をとるかによって、敵対的・強制に近いものから、お互いにWin-Winの関係となる協調的な交渉もある。 教科書的には相手と協力・協調・協同し、新しい価値を創造していく、長期的な信頼関係を築くには協調的交渉がよいとされている。 もちろん、損害賠償やクレーム対応、相手によっては自分の会社を守るために敵対的交渉を避けるわけにはいかないことがあるのが現実の世界。 営業における交渉は商品・サービス、品質、数量、納期、在庫、サプライチェーン、価格などすべてを含んでいる。これら全体を把握して、交渉することになる。 駆け出しのビジネス人だった頃を思い出す。先輩から教えられた営業の交渉は、商談の場の駆け引きが大半だった。その当時は「そうなんだ」と思ったが、多くのビジネス現場や人との接点が増えるにつれ、「そんなに単純ではない」と思うように。 当然ながら、当時の営業の心得は商談の場にフォーカスを当てていた。そのことは頻繁に聞かされた言葉から裏づけられる。つまり、身だしなみ、言葉遣いや立ち振る舞い、最初に吹っかける、代替え案を持つ・知る、落としどころ、最後通牒、善人+悪人という役割分担、相手の顔を立てる、泣き落とし、食らいつけ、熱意を見せる、などなどである。 令和の今では営業の交渉力は会社としての総合力、まとまり力、謂わば総力戦でもある。
お客さんと共存し長続きする営業 一方的に譲歩させられ「うちは負けた」「うちは損した」、交渉相手は「うちは儲かった」「うちは勝った」という極端な交渉の結末がある。負けた感の当事者は「そうは言っても、あそこと取引することで信用力がつく。技術力が上がりそう」などと営業人たる自分を無理やり納得させ、会社の上司や会社の同意を得ようと涙ぐましい努力をする。 このような無理が長続きするわけがない。 当の本人はもちろん、「あそこは嫌だ」となり次回からの商談は最初からおよび腰になってしまう。さらに言えば、お金で動いているのが現代の社会なので、一方の企業が損し続ける取引は長続きせず、いずれ破綻するのが自然である。 交渉の場面でハト派とタカ派の2つのタイプが想定されるが、一般的に生き残るのはWin-Win型の協調型、お互いに新しい価値を創り出した場合と言われる。世の中には厳しい取引で有名な会社がいくつかある。傍目から見ていると、高いマネジメントレベルを要求されそれをクリアしないと採算がとれない。しかし、厳しい交渉の取引ながら結果的にはともに成長を続けており、ある意味でWin-Winの協調型交渉と言える。
営業は総力戦 商談の場の限られた交渉力が営業力の源泉ではなく、ごく一要素に過ぎない。これまでお会いした優れた営業人の特徴は、社内外での豊富な業務知識と経験、業界動向や提供する商品・サービスの価格や品質などの「相場観」をしっかり持って、お互いに譲歩し過ぎることなく交渉をフェアに進めている。 交渉の際、「これを受注したら、本社から何か嫌なことを言われないか」、「生産は喜んで受けてくれるだろうか」、「受注したら自分の仕事がパンクしそう」などと思案するようでは、交渉はうまくいくわけはない。現実にはそのような会社は多いが。 営業は個人の力量も大切だが、営業組織としての共有する基盤が不可欠である。営業情報、顧客データベース、コミュニケーションのための定期的会議、営業支援の仕組み、他部門との情報や価値観、目的共有の仕組みなどである。 これらの共有する基盤があって初めて、営業全体の豊富な業務知識と経験、そして相場観に裏打ちされ大きな視野でフェアに交渉でき、営業組織と営業人が活躍できるのではないか。 スーパースターの営業人の孤軍奮闘に依存していては、やがてその本人が疲弊してしまい、多くの場合、退社に至る。それは本人だけでなく会社としての信用をはじめ、多くのものを失ってしまうことを意味する。組織としては避けなくてならないことである。
おわりに 人や会社には記憶力があるので、誰かに騙されたことは記憶に留めていて、「いつか仕返しを」と考えるのが普通の人や会社である。また、交渉が決裂しても最後は握手で終えて、将来の機会を失わないことも大事である。それは次のとき、次の次、10年後かもしれないが、感情的に決裂しなければ、必ずその交渉相手か周辺からチャンスがもたらされる。 営業現場の交渉はフェアに総力戦で、そして感情的に決裂しないことが肝要である。
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株式会社アイベックス・ネットワーク 委嘱コンサルタント(元青森中央学院大学 教授) 塩谷未知 |
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なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。
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関連情報 |
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情報番号 |
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◆ 経営者が行う営業活動の意味と勘所は |
20150928 |
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◆ 業績向上の方法/属人型営業を捨て組織力を活かす |
20170789 |
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◆ 交渉力はビジネスマン必須のスキル、交渉力向上教育への取組み |
20080443 |
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◆ 情報活用による営業力強化 |
01020872 |
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