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今回は「エンパワーメント」シリーズの最終回です。

セルフ・エンパワーメントには、「人間力を高める」、企業人にとっては「自らの意欲や能力を開花させる」という意味もあります。その中でも"主体性"がキーとなりますが、主体である「自我」とはどういうものであるか、どう確立していくかについて、もう一度考えてみたいと思います。

最終回のテーマは「自我と無我」です。自我の発達段階について、長年多くの企業でエンパワーメント研修の指導をされてきた、八尾芳樹氏に解説していただきます。

自我と無我

「自我」と「無我」は、仏教の重要な概念であり、哲学的な議論や心理学的な観点からも探究されている。

自我は、個々の人間が自分自身を認識し、自己意識を持つことを指す。これは「私（わたし）」や「僕（ぼく）」などの個人的なアイデンティティや意識的な存在感を示す概念である。自我は通常、個々の経験や社会的背景、思考、感情などによって形成され、自我には肯定的な側面（自己愛、自己実現、自己認識など）と否定的な側面（エゴイズム、独善性、自己中心性など）がある。"あの人は自我が強い"という表現は否定的な側面からの指摘に当たる。

一方、無我は、仏教の教えの中で特に重要な概念であり、「自己の無存在」や「自己の非実在性」を意味する。これは、「我が自己」というアイデンティティや個人的な存在を超え、普遍的な存在や真理にアクセスすることを指す。無我の考え方は、個々の自我を超えて普遍的な愛や慈悲、理解、照準などの境地に到達することを目指し、無我の理解は、仏教の修行や瞑想の実践を通じて深められるとされている。

以上は一般的な説明になる。自我と無我の関係は、一見対立するように見えるが、実際には補完関係にある。仏教の観点では、自我を理解することが無我への道を開く第一歩であり、自己認識や自己探求を通じて無我の境地に近づくことができるとされている。弊研究所では主体である自我の発達段階を次の４つの段階でとらえている。

ステップ１　【依存的】

他者・集団に依存し、埋没、迎合している（没個的） 組織や役割に埋没あるいは迎合してしまい、自分自身を見失っている状態。皆と絶えず 同じでなければ不安なため、自分を犠牲にしている。主体性を見失っているか確立できない状態。

ステップ２　【独立的】

他者・集団から独立し、自らを主張する（個の芽生え） 積極性が芽生えたり、皆と違う思考・行動パターンをとることによって自らの存在を確認する。自分の考え方を主張できる段階。

ステップ３　【自立的・自律的】

他者・集団との共生、協創（個の確立） お互いに違うことを受け入れることができ、他人の考え方や行動も尊重できる。共存共栄の関係。行動は目標指向的で自己管理ができ、自分の意見・行動に責任がもてる。

ステップ４　【無我】

自分と他者・集団を超えた視点を持つ（自己超越・超個的） 他人も自分も超えたところの意識がもてる。お互いを超越した全体最適の視野に立った 考え方ができる。地球的・宇宙的な視野に立った考え方ができる。

日本人の主体性確立の段階は、

入社2・3年目（Ｎ＝８３２）のレベルは、レベル２の「他者・集団から独立し自らを主張する」段階の少し手前である１．９段階。

50歳・55歳（Ｎ＝２７８）の人は、レベル２を超えた２．２段階である。

年齢を問わず、レベル３の「他者・集団と互いに共生、共創する」段階には至っていない。

これは良くも悪くも日本人の特徴でもある。

本来、無我の境地とは、レベル３を経て「自分と他者・集団をこえて視点を持つ」レベル４のことである。

これらの２，３の段階を経ずして、４の無我の境地を求めるのは、自分の困難な感情を回避するためのスピリチュアルバイパス（迂回路）になる。

株式会社アイベックス・ネットワーク コンサルタント

㈲ＹＡＯ教育コンサルタント　代表取締役　八尾 芳樹　https://yao-ec.co.jp　

なお、「ＪＲＳ経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

関連情報

JRS経営情報（PDFサンプル）

情報番号

◆　セルフ・エンパワーメント：自我の7つの機能①

20230424

◆　セルフ・エンパワーメント：自我の7つの機能②

20230425

◆　セルフ・エンパワーメント：自我の7つの機能③

20230426

◆　セルフ・エンパワーメント：自我を育てる

20230437

◆　セルフ・エンパワーメント：主体性確立の段階

20230438