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近年、日本の労働生産性について話題になることが多くなってきています。労働生産性は様々な業種において重視される指標ですが、世の中に流布されている労働生産性には、適切に解釈されていない物も見受けられます。 そこで今回は、その問題点を解説するとともに、国内の業種・規模ごとの労働生産性の現状と、労働生産性を向上するための対応策について、中小企業診断士として経験豊富な米倉時雄氏に解説していただきます。
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労働生産性の現状とその向上に向けた対応策 |
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1.労働生産性の種類と内容 (1)国際比較で使われる労働生産性 OECDが発行(日本生産性本部が日本語版発行)している労働生産性の資料に掲載されている国際比較グラフにおいて、日本は加盟38カ国中23位となっているため、効率をもっと上げて生産性を高めなければいけないと思っている方も多いかと推測する。 しかしこれは、適切なデータの解釈とは言えず、闇雲に効率向上の為に無駄なエネルギーを使っている可能性もある。このグラフは、以下の特徴がある為、次に執るべき具体策を検討することは困難である。 ①企業規模・業種の区分無し、国ごとの構成比も考慮無し ②物価差の反映がかなり不十分 ③法人税の違いによる影響の考慮無し ④物・サービスの品質の高低の考慮無し ⑤サービス(おもてなし:従業員の態度等)の高低の考慮無し ⑥海外子会社を設立・制御する本国企業の対応成果は考慮無し (海外からの投資で企業が設立された国ほどGDPが高まる。(中国等))
幾つかの観点について、具体的に以下に解説する。 ②:朝定食が某国で日本の3・4倍したり、ハンバーガーが2倍以上したりする。また、ニューヨークでは昼食が3~4千円したり、替玉付きラーメンが5千円もしたりする。(2023年初め頃。)このような高物価国が高生産性国の上位に位置しているが、この物価差を十分に反映できていない。(そもそも反映は困難である)
③及び⑥: 「世界の法人税(法定実効税率)ランキング」によると、生産性1位のアイルランドは、2021年法人税率が12.5%(税率順位36位)の為、Apple、Google、Facebookといった外資系大企業の欧州本部が置かれ、アイルランドのGDPを押し上げているが生活レベルは向上していない。(2023年からは一部を除き15%) (日本は29.74%(税率順位7位)となっている。)
⑤:有名なコーヒーチェーンの店員の対応、高級ホテルのサービスを、ニューヨークと東京で比較すると、東京の方がずっと快適である。
以上のことから、このようなデータに振り回される必要はなく、また、これを根拠に生産性を上げるべきであると言っているコンサルタントには気を付けるべきである。 そして、ことさら日本は生産性が低いと悲観する必要はないのである。
労働生産性とは、付加価値労働生産性であるが、上記データにおける付加価値とは、各国のGDP(国内総生産)である。計算式は以下の通りになる。
労働生産性 = GDP/就業者数(又は、就業者数×労働時間)
(2)物的労働生産性 生産する物の、個数・重さ等、物理的な量を労働量で割ったものであることから、計算式は以下の通りになる。
物的労働生産性 = 生産する物の物量/労働量
例えば、ある生産現場で10人の社員が7.5時間で100個の製品を生産したとする。社員の物的労働生産性は10個/人になり、社員の時間当たりの物的労働生産性は、10個/7.5時間=1.33個/時間 となる。
(3)付加価値労働生産性 付加価値とは、売上高から外部購入費用を引いたものである。ここに外部購入費用とは、原材料費・部品仕入れ額、外注加工費用、機械の修繕費用、動力費用などである。つまり、付加価値とは、外部購入物を加工する等、手を加えることで新たに付け加えた価値を言う。 別な表現をすると、付加価値は以下の式で表すことができる。
付加価値 = 営業利益+人件費+減価償却費+企業運営費
ここに「企業運営費」とは、賃借料(地代・家賃・リース料等)、支払い特許料、金融費用(金融収支:支払い利息・割引料等)、租税公課(固定資産税・登録免許税等)を含む。 なお、東京都経営革新計画の申請においては、「企業運営費」という項目は付加価値に含まれておらず、その一部が「減価償却費」に含まれていたりするので、記載要領を十分に確認する必要がある。 以上から、付加価値労働生産性は以下の式で表すことができる。
付加価値労働生産性 = 付加価値額/労働量
例えば、ある生産現場で10人の社員が7.5時間で生産した物の売上額が、100万円だとする。外部購入費用が30万円だとすると、付加価値額は70万円になるので、社員の付加価値労働生産性は7万円/人になり、社員の時間当たりの付加価値労働生産性は、7万円/7.5時間=9333円/時間 となる。
2.労働生産性を高める方法 (1)日本国内の製造業及び卸売業、小売業の労働生産性の現状 財務省財務総合政策研究所総務研究部「企業規模と賃金、労働生産性の関係に関する分析」(2019/12)によると、製造業及び卸売業、小売業における企業規模と労働生産性の関係は以下の通りとなっている。なお、サービス業は業種ごとに数値が掲載されているので、詳細は当該資料を確認頂きたい。
企業規模と労働生産性の関係(役員含まず):中央値(単位:千円)
製造業と卸売業は10~19人規模の企業群が最低、小売業は5~9人規模の企業群が最低となっており、その後は規模が大きくなるにしたがって、ほぼ生産性は向上している事が分かる。
(2)労働生産性を高める手法 ①現状の把握と問題点の特定(As-Isフローの作成) 社員に業務の内容と対応方法、所要時間等をヒアリングシートやヒアリングで把握する事に加え、業務の場面を見せてもらう事で正しい把握ができる。そして、どの工程の所用時間が長く、ミスをし易いか、ストレスが溜まり易いかを把握する事が必要である。 次に、現状の業務フロー(As-Isフロー)を作成し、所要時間が長い工程、ミスが多い工程と頻度・時間、ストレスが溜まりやすい工程を、フローに記述する。(或いは補足資料として記す。) また、これをヒアリングした社員に確認してもらう事が必要である。 これらの過程を通じて、現在の生産性はどの位か計算する。
②生産性の到達目標の設定 これは短期間で一機に高めるのではなく、たとえば、半年後・1年後というステップごとに設定する事により、改善すること自体が負担にならなくて済むと思われる。
③問題解決策の検討 作成したAs-Isフローを基に各問題の要因分析を行い、その解決策を検討する。要因分析は、要因の要因まで掘り下げる事によって、対応策を見つけ易くなる。 幾つか出た対応策は、幾つかの観点で優先順位を付ける事が必要である。例えば、対応コスト、対応所用時間、効果の程度、効果がすぐ出るか長期的か、実現性などである。対応策には、情報システム構築や、定型的で定期的な大量の作業の効率化に向いており、現在多くの企業でも挿入されているRPA(ロボティックス・プロセス・オートメーション)など、既存のソフトウェアの導入なども含む。
④改善後の姿の作成(To-Beフローの作成) 対応策を決めたら、それを盛り込んだ改善後業務フロー(To-Beフロー)を作成する。そしてこれを、実際に業務を行っている社員に見せて、意見を聞くことも必要である。
⑤改善策の実行と検証 To-Beフローに沿った業務を行う事で、どの位の改善効果が出たかを把握するとともに、改善効果が十分でなかった場合はその要因を考えて改善策を改める。また、新たな問題が起きていないかの確認を行う。
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イー・マネージ・コンサルティング協同組合 中小企業診断士 米倉時雄 |
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なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。
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関連情報 |
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JRS経営情報(PDFサンプル)
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情報番号 |
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◆ 労働生産性の現状とその向上に向けた対応策 |
20230493 |
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◆ 生産性と付加価値 |
11520255 |
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◆ 労働生産性と付加価値の改善 |
11520258 |
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◆ 「人」からもっと生産性を考えて目標値を設定する |
11520261 |
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◆ 「物」からみた労働生産性と数値の検討 |
11520262 |
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