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No.303 JRS メール配信サービス(2025.07.28)

JRSメール配信サービス発行

 

 

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ここ数年、生成AIが急激に進化し、ビジネスの世界においても様々な場面で使われるようになってきました。大学や大企業だけではなく、中小企業や個人の生活の中でも使う機会が増えてきているのではないでしょうか?生成AIを使えば、複雑な大量の情報を分析することができるようになり、課題解決の方法もわかるようになってきたように思います。

しかし、そうした知識や技能を自分自身の中に蓄積し、これから先、どう進んで何をすべきか考え出し、周囲にも共有して推進していくためには、もう一段高いレベルに自分自身を引き上げなければならないのではないでしょうか。

今回は、『「できる」、「わかる」、そして「みえる(観える)」を目指す』と題して、人材育成や人材活用にも造詣の深い元青森中央学院大学教授の塩谷未知氏にお話をいただきます。

 

 

 

 「できる」、「わかる」、そして「みえる(観える)」を目指す

 

 

 

「読み・書き・算盤(ソロバン)」という実践的基礎学力を身につけることが、世間の荒波を乗り越えるために古来推奨されてきた。変化が激しい現在でも、これらの基礎学力があれば、何か新しいスキルが必要になったときには何とかなる。母国語である日本語ができれば、学ぶことができる学びの環境をつくり維持してきた、先人の努力のお陰である。

 この3つの基礎学力志向が世の中に与えた影響は甚大であり、時には「できる」という実践を強調し過ぎることがある。その結果、物ごとの本質を見極める「わかる」とか「みえる(観える)」という理論や哲学的な理解や思考を、"机上の空論"とか"頭でっかち"と否定してしまう。鋭い洞察力には「みえる(観える)」レベルの見識が求められるのではないか。

 馬齢を重ねた今になって初めて、そのあたりのことを実感として少しだけ理解できるようになった。私たちの多くが苦手意識をもっている数学を1つの事例に、「できる」「わかる」「みえる」について一緒に考えてゆきたい。

 

かけ算九九は「できる」が

 たし算・ひき算、かけ算・わり算という四則計算をこなせば、日常生活や会社員生活は何とかなってきた。最初に「かけ算九九」を丸暗記し、「乗除先加減後」(かけ算・わり算を先に計算し、たし算・ひき算は後から)と機械的に学習し計算ができるようになった。

 しかし、少しだけ振り返ってみよう。例えば、かけ算九九の1つである5×630、マイナスとマイナスをかけるとプラスになる(例えば、-5×-6=+30)と機械的に学習し使っている。しかし、その意味するところはよくわかっていない。

 たぶん、そのあたりのことを理解できるのが数学なのだろうが、私たちは食わず嫌いや挫折感からこのあたりまでも踏み込まない。

 最近、数学を使いこなしている物理学の研究者に教えてもらったのは、「数学は自然現象を説明するためのもっとも抽象的な『言葉』[]である」ということである。後期高齢者に近くなって、やっと少しだけ数学の「みえる(観える)」に触れたように錯覚した。そして、物理学者が縦横無尽に数式を使い、物理現象を黒板に書いている映画のシーンを眺めながら、「そうか、母国語を同じように数式を扱うんだ」と合点がいったものの、時すでに遅し。

 

[]蛇足ではあるが、現代社会においては国語(日本語)、外国語(英語)、数学、プログラミング言語、音楽という5つの言葉に精通とまではいかなくても、多少の馴染があった方がよいと思われる

 

技能、技術、技術観

ビジネス人は古典的には事務系と技術系に分かれる。技術系の場合、最初は現場に配属され、例えば何かの機器を使って分析や加工する技能(できる)を身につける。仕事の経験を積むにつれて、その技能は広がり深くなる。同時に学生時代に学んだ専門知識と結びつけるか、学び直しをしながらより普遍性・共有性があり問題解決(ソリューション)ができる技術(わかる)まで理解を広げ深める。さらに経験と知識・見識を長い間積み上げるうちに、社内外の技術の潮流や位置づけを理解し共有できる、自分の軸足である技術観(みえる)を身につけるようになる。技術観を身につけると、先々を見つめながら何を強化すべきか、あるいは世の中で提案された新規の技術について、直ちに自社に取り入れるか、あるいは様子見するかの的確な判断ができる「目利き力」が備わってくる。

 事務系の場合、例えば営業に配属になると、顧客管理、顧客研究と提案などの技能が求められ、1つずつ経験し技能(できる)を増やしていく。数多くの社内外の直接・間接の顧客とやり取りを経験しながら、理論的な背景となる、例えばマーケティング論を学び「わかる」ようになるわけだ。

 さらに経験と知識・見識を長い間蓄積することで、マーケティング観(みえる)が身につく。その結果、社内外の顧客の変化やマーケティングの潮流を理解し、「やるべきこと」、「やってはいけないこと」が「みえる」ようになる。

 ビジネス人として「できる」、「わかる」そして「みえる(観える)」ようになるには日々の研鑽、社内外との観察やコミュニケーションの蓄積が不可欠。このレベルまで達すれば、業界のみならず世の中での存在感が高まり、あちこちから相談される存在となっている。

 

できる、わかる、そしてみえる(観える)を目指すには

 「〇〇が『できる』」ようになるために役立つのはマニュアルであり、先輩や仲間の指導や真似であることが多いが、それだけでは独りよがりになったり、偏りが出たりしてしまう。一歩前に進むには基本に立ち返りながら、「できる」技能を体系的に学習する必要がある。そのときに役立つのは工業・商業・農業などの職業高校の教科書である。事務系の業務に関しては、商業高校のビジネス基礎やマーケティング、簿記や会計などの教科書は「できる」の基本を学び「できる」を広げ深め強くするのに役立つ。

 さらに踏み込み「わかる」ためには理論的な学習が求められるが、大学の教科書や専門書をじっくり読み込んだり放送大学を視聴するのがお薦め。もちろん、教養書と言われている書籍も役立つ。教養書は現在では死語に近いが、百花繚乱の新書の中には学術書に近い教養書があり、自分の専門にかかわらず幅広く目を通すことで理論的な理解が進む。

 そして、それらの知識に加えて、日々の成功・失敗の貴重な経験、社内外のいろいろな人との観察やコミュニケーションや議論、何ごともやりっぱなしにせず気づきや考えたことの記録を続け時々振り返る。それを10年、20年、30年とやり続け見識として蓄積する。 

 その蓄積により「みえる(観える)」ようになり、仕事や技術・マーケティング観・哲学が構築され、ムダに振り回されない自分の軸足ができる。そして、目の前の変化に惑わされず本質的な施策を発想し行動に移すことができるようになる。

 

おわりに

これまで、世間では「できる」という実践を大事にしてきた。今後は「できる」に加え理論的な「わかる」に挑戦し、さらにどんなことでもやりっ放しにせずに経験の蓄積と振り返り、そして思考を繰り返す。一段高いレベルの「みえる(観える)」まで到達し、洞察力をもって仕事、技術、世の中の変化を透徹した目で捉えて行動できるようになりたい。

 

 

 

株式会社アイベックス・ネットワーク 委嘱コンサルタント(元青森中央学院大学 教授)

塩谷未知 

 

 

 

 なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

 

 関連情報

 

 

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情報番号

 

 

 習慣、スキル、理論、そして仕事観を身につける

20230437

 

 

 マネジメントは技術であると認識しよう?

20062651

 

 

 経営理念を形成するための本質思考

20071467

 

 

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