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No.306 JRS メール配信サービス(2025.10.27)

JRSメール配信サービス発行

 

 

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新人や若手社員に"コンプライアンス"の意味を的確に伝え、会社の危機を未然に防ぐシリーズの3回目です。

昨今も、大手メーカーでの製品検査の手抜きやデータの書き換え、科捜研での不正なDNA鑑定など、コンプライアンス違反のニュースが後を絶ちません。

今回は、若手社員のちょっとした「違反」に焦点を当て、そこから生じるトラブルが会社にどんな影響を与えるのか、その「違反」を防ぐためにはどうすればよいか、について、事例をもとに人事コンサルティングや人材育成・能力開発のための教育に詳しい株式会社KakeruHR代表取締役の一松亮太氏にお話をいただきます。

 

 

 

「ちょっとくらい」が会社を危なくする-職場で知っておくべき事例

 

 

 

「ちょっとくらい」の気持ちが招いた大問題

前回までのコラムで、コンプライアンスの重要性や職場内コミュニケーションの意義について触れてきた。しかし、職場で最も軽視されがちでありながら、最も危険な考え方がある。それが「ちょっとくらいなら大丈夫」という認識である。

 

現場で実際に起きたトラブル―具体的事例

ある製造業の企業で、若手社員が作業手順の一部を自己流に省略していた。作業が簡単になり時間短縮ができるため、本人は「効率的だ」と考えていた。ある日、その若手社員は体調不良で急遽休暇を取ったが、省略された手順の詳細を周囲が把握しておらず、代わりに業務を担当した別の社員が手順を間違えてしまった。結果、その省略が原因で製品に不良が発生し、取引先から大量のクレームが寄せられた。結局、大規模なリコールにまで発展し、会社は巨額の損害を負うことになった。

調査の結果、同じ手順省略が他の社員にも広がっていることが判明した。その根本には、「これくらいは大丈夫だろう」「以前も問題なかったから」という軽い考えがあったのだ。さらに、この問題が公になったことで、取引先が契約の見直しを検討し始め、新規の大型案件が次々と見送りになり、売上にも深刻な影響が出た。また、SNSなどのネット上でこの事件が拡散されることで、会社の評判が一時的に著しく低下し、社員の士気にも悪影響を及ぼした。

 

なぜ小さな違反は軽視されがちなのか?

なぜ、このような小さな違反が繰り返されるのだろうか。その背景には、「自分一人くらい大丈夫だろう」という心理がある。また、小さな違反がすぐに問題にならない場合も多く、「成功体験」として誤った自信が生まれてしまうことも問題である。

しかし、「問題が起きなかった」のは単なる偶然や運でしかない。本質的には、「ちょっとくらい」が会社の信頼を根底から崩壊させるリスクを常に抱えている。

 

小さな違反が職場全体にもたらすダメージ

事例のようなトラブルは、違反した個人だけの問題にはとどまらない。取引先や顧客からの信頼を失えば、会社全体が影響を受ける。さらに、職場全体のモラル低下や、「あの人もやっているなら自分も」といった悪い連鎖が生じる恐れもある。

こうした負の連鎖が続けば、気付かないうちに組織のコンプライアンス意識は崩壊し、取り返しのつかない状況に陥ることもあるのだ。

 

今日からできる、小さな違反を防ぐ職場づくり

では、こうした小さな違反を防ぐために、職場で何をすれば良いのだろうか。まずは「ちょっとくらい」という軽い認識を変えることが第一歩である。「小さなことでも徹底して守ることが大切」という認識を職場全体で共有することだ。

また、定期的に「ヒヤリ・ハット(事故につながりかねない小さなミスや違反)」を共有し、職場全体で問題意識を高める取り組みも有効だろう。ミスや小さな違反を発見した時に叱責するのではなく、「よく気付いてくれた」と前向きに評価する雰囲気を作ることも重要である。

やはり日々の対話が重要である。手心や工夫を加えることと、小さな違反を許容することは別問題だ。その意味で、「今日はどんな工夫をしたか?」「躓いたところはないか?」など、ちょっとした日常のコミュニケーションを積み重ねることが大切である。

さらに、職場のルールや手順が「守るべき理由」とともに明確に説明されていることも重要だ。単なるマニュアルの遵守ではなく、「なぜそれが必要なのか」を理解することで、社員一人ひとりの納得感が高まり、ルールが形骸化せずに根付いていく。特に新人や異動者に対しては、業務の背景や過去の事例を交えて説明することで、形式的な教育ではなく実効性のある指導が可能になる。こうした積み重ねが、職場全体のコンプライアンス意識を底上げする土台となる。

あなたの職場でもぜひ、「ちょっとくらい」のリスクを再認識し、小さな違反を未然に防ぐ具体的な行動を始めてみてほしい。職場みんなでコンプライアンス意識を高め、安心して働ける環境を育んでいきましょう。

 

 

 

株式会社KakeruHR 代表取締役

一松 亮太 

 

 

 

 なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

 

 関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

情報番号

 

 

 潜在リスク発見の着眼点/仕組みの側面①違反の機会の存在

20240335

 

 

 潜在リスク発見の着眼点/能力の側面①個人の能力不足

20240337

 

 

◆ 潜在リスク発見の着眼点/組織風土の側面①歪んだ職場風土・体質

20240339

 

 

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