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No.314 JRS メール配信サービス(2026.06.29)

JRSメール配信サービス発行

 

 

いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。

 

今回のメルマガは、ほぼ一段落した2026年の春闘を受けての記事です。

引き続き物価高が続く一方で、人手不足は深刻化しているため、今年の春闘も前年に続いて高水準の賃上げとなっています。こうした中で、余力が乏しい中小企業の経営者は、どう対応していく必要があるのでしょうか。

今回は、賃金や人事制度の専門家で、JRS経営情報にも執筆頂いている株式会社プライムコンサルタントの執行役員 田中博志様に、2026年の春闘を振り返って、その意味と今後の企業のとるべき備えについてお話をいただきます。

 

 

 

 「賃上げを可能にする経営へ―2026年春闘から考える来年への備え」

 

 

 

今年の春闘は、前年に準じた高水準の賃上げとなりました。春闘の大勢が見えてきた今、中小企業や小規模企業の経営者は、この動きをどう受け止めるべきでしょうか。

 

2026年春闘では、連合の61日時点の集計で、全体の賃上げは16518円・5.02%。300人未満の組合でも12929円・4.70%となり、前年並みの水準を確保しました。経団連の十倉雅和前会長が、2023年を賃上げの「起点」、2024年を「加速」、2025年を「定着」と位置づけてきた流れは、2026年も途切れなかったと言えます。

 

賃上げは一時的なブームではない

 

背景にあるのは、物価高と構造的な人手不足です。

 

2025年の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合で前年比+3.1%。名目賃金は上昇しましたが、実質賃金は年平均で1.3%となり、働く人の生活にはなお厳しさが残っています。最低賃金も全国加重平均で66円引き上げられ、1121円となりました。すべての都道府県で1000円を超え、自社の賃金水準の確認と見直しが避けられなくなっています。

 

企業の採用競争も激しさを増しています。2027年春の新卒採用計画は今春実績より5.4%増、2026年度の中途採用は前年度実績より9.6%増となる見込みです。採用計画全体に占める中途採用の割合は初めて5割を超え、大卒初任給を30万円以上に設定する企業も245社に増えました。

 

初任給そのものも急上昇しています。連合の同時点の集計では、大卒・事務技術職が248852円、高校・事務技術職が209945円となりました。また、UAゼンセンの集計ではパート時給の引き上げ率が正社員を11年連続で上回っています。若手や非正規雇用者を含め、賃金水準全体が押し上げられているのです。

 

もはや賃上げは「余裕があれば行うもの」ではありません。人材を確保し、事業を続けるための前提条件になりつつあります。

 

中小企業にとって本当の課題は何か

 

しかし、この状況は、中小企業にとって重い課題です。

 

2025年度の企業倒産は2年連続で1万件を超えました。特に、負債額5000万円未満の中小零細規模の倒産が2000年度以降で最多となり、「物価高倒産」「人手不足倒産」も過去最多を更新しています。賃上げの必要性が高まる一方で、原材料費や物流費も上昇しています。経営の余力が小さくなっている企業も少なくありません。

 

2024年度の法人企業統計調査によると、資本金10億円以上の企業の従業員一人当たり付加価値額が1666万円であるのに対し、資本金1000万円以上2000万円未満の企業では577万円にとどまります。付加価値額に占める給与・賞与の割合は、大企業の39%に対して小規模企業では58%です。

 

中小企業は、大企業に比べて賃金水準が低いだけでなく、賃上げ余力も限られています。だからこそ、来年の賃上げを考える前に、今年のうちから「原資をどう生み出すか」を考えなければなりません。

 

価格転嫁はもちろん必要です。しかし、それだけでは足りません。事業のあり方、業務の進め方、人材の配置と育成を見直し、限られた人数でより高い価値を生み出す経営へ変わる必要があります。

 

来年に向け、今から始める

 

幸い、デジタル技術やAIの進歩により、中小企業でも業務の再設計や意思決定の高度化に取り組みやすくなっています。大企業よりも小回りが利くからこそ、大胆に変えられることもあります。

 

まず考えたいのは、自社の付加価値がどのように生まれ、どこで仕事が滞っているのか。そして、限られた人材をどこに重点配置し、どんな役割を担ってもらうのかです。

 

そのうえで、「役割」や「職務」を明確にし、事業戦略に沿って人を配置・育成する。付加価値向上に貢献する人に、きちんと報いる。こうした仕組みを整えることが、賃上げを一過性で終わらせないための土台になります。

 

足元では、中東情勢の緊迫化により、原油価格や物価が上昇し、景気の下押しも懸念されています。しかし、外部環境の悪化を理由に、賃上げの歩みを止める選択肢は、もはや採り得ません。

 

今問われるのは、賃上げを続けるかどうかではなく、賃上げを可能にする経営へ変われるかどうかです。春闘の大勢が見えた今こそ、来年に向けた準備を始める時期です。

 

 

 

株式会社プライムコンサルタント 執行役員/中小企業診断士 

田中博志 

 

 

 

 なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

 

 関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

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