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No.316 JRS メール配信サービス(2026.08.31)

JRSメール配信サービス発行

 

 

いつも、メルマガをご愛読いただき、有難うございます。

 

今月のメルマガも、先月に続いてAIとのつきあい方のお話です。

日々急速に進化するAIによって、やがてビジネスマンの仕事の多くがAIによって代替され、人間が要らなくなってしまうのではないか、ともささやかれています。

そんな時代の中で、一人の人間としてのビジネスマンが、存在意義を発揮するにはどうすればいいでしょうか?

今回は「AIの急激な進化、五感を研ぎ澄ますことを忘れない」と題して、先月に引き続き元青森中央学院大学教授の塩谷未知氏にお話をいただきます。

 

 

 

 AIの急激な進化、五感を研ぎ澄ますことを忘れない

 

 

 

電車の中で隣に座った学生がレポートを、スマートフォン(スマホ)の画面を見ながら書いている。スマホの画面をのぞくと、人気AIの表示が出ている内容を見ながらボールペンで書き写していた。ネットにあるレポートのコピペからAIを日常的に活用するステージに移っていることに改めて驚くと同時に、この学生に「幸多かれ」と祈った。

 AIを試しに使って無知の分野の資料を作成してみると、瞬間的に驚く出来映えのアウトプットが出てくる。しかし、そこには違和感がある。つまり、みかけの体裁が完璧すぎ、同時に「熱量」や「個性」、個人の「思い」や予期せぬ「間違い」や「抜け落ち」などが欠落している。良くも悪くも「期待を裏切らない」わけだ。

 

AI投資がAI投資を呼び、必ず誰もが使い・使われるインフラに

 高度成長期に「『鉄』が『鉄』を呼ぶ」と言われた。製鉄会社が製鉄所に投資をし、鉄の生産量を大幅に引き上げる。すると、鉄を使った建設や産業が活発化し、新たな鉄の需要を生み出す。そして製鉄会社では増える旺盛な需要に応えるため、新たな製鉄所に投資をする。

 今は間違いなく、「『AI』が『AI』を呼ぶ」状況で、何兆円という投資がAIの基盤技術開発に投資され、開発されたAI商品の一部が無料公開され、多くのユーザーが使い始めている。投資と活用が一体となり進化・革新・進歩・浸透が想定を超える速さで進み、誰もが使い・使われるインフラとなりつつある。

 

第3次AIブームのバックグラウンドの「外側」

 画期的な技術であるディープラーニング(深層学習)が登場したことにより第3次AIブームが起きたが、一過性に終わらずブームではなく潮流となっている。第3次ブームのバックグラウンドには、半導体やコンピューターの演算速度や容量、コストパフォーマンスの飛躍的進歩、インターネットの普及と社会のデジタル化の浸透がある。

 会社、個人、社会がインターネットでつながり、情報の受発信と蓄積が、パソコン(PC)、スマホ、タブレットなどを通じて24時間365日間行われている。AIはそれらのデジタル資源をつなぎ、人の言葉や画像を瞬時にまとめ上げ画面上に提案する。

 実際、何かを知りたいときにネット検索すると、AIが知りたいことを見事に要約してくれる。これで分かった気になってしまい、個別のサイトを訪れることがなくなってきた。

 先日、締め切りが迫った報告書の作成の際、気づいたこと学んだことをメモ書きし、AIに報告書仕様でまとめてもらった。完璧な報告書仕様のアウトプット、それ以上でも・以下でもなく、残念なのは自分が感じたり学んだ微妙なテイストが欠落していたことである。

 最近、SNS投稿を眺めているとイラスト付きが増えてきた。それらのイラストは完璧だが似たり寄ったりの代物、間違いなくAI作成のもので見飽きてしまい、物足りなさを感じる。

 文章や図表、そして画像に自分独自のテイストを持たせるには、ある意味で「ヘタウマ」と言われる個性が個人の差別化につながることに気づく。

 そうなると、第3次AIブームのバックグラウンドであるデジタル化の「外側」、つまり、自分独自・独特の気づきや観察、独自の思考、そして現場の雑談などを頭と手が動くままに紙にアナログ(手書き)で支離滅裂に書きなぐるメモ、ポンチ絵などの記録や思考が個性あるテイスト創出の秘訣になりそうだ。

 

個性、熱量、違和感が基軸

 ビジネスの場面で作成する文書、例を挙げれば議事録、企画書、提案書や報告書、AIはとても頼りになる。ただし、綺麗に整っているだけではお客さんや会社の仲間の心の琴線には触れることができそうになく、結果として人は動かない。

 会社のなかで何かをやるための提案には個性や熱量が必要であり、仕事を進めたり仲間と共有するためには文章化できる「形式知」だけでなく、一緒にやることで伝わる「暗黙知」が大事である。例えば、何らかのリスクや危険、逆にチャンスに気づくには「あれっ」という違和感や「なるほど」という共感が不可欠である。それらをベースに個人と仲間で思考を積み重ねることで、卓越したイノベーションやソリューションが生まれ、また、危険やリスクの感知と回避ができる。

 「あれっ」という違和感は五感を研ぎ澄ますことから生まれる。さらに、その違和感を無暗に否定しない職場の雰囲気を大事にしたい。また、違和感は精緻な文章やイラストでは表現できず、ポンチ絵や何となくこんな感じかという稚拙なメモになることが多いが、それらはそれでとても価値がある。

 

「任せて任せず」、アナログな観察・思考・表現を堅持する

 働き方や管理の極意を示した言葉に、松下幸之助の「任せて任せず」というのがある。管理者は仲間(部下)に任せきりではなく、かといって管理だけでもなく、仲間のよいところを活かしながら一つ上の視点で見守るというような意味合いと理解している。

 AIについても同じように「任せて任せず」、「頼り頼らず」というのがよさそうだ。AI活用による業務を効率的・効果的に進めるのは、早晩ビジネス人にとって当たり前のことになる。その時にビジネス人として輝き続けるには、アナログ観察・思考・表現力を日々磨き続けることが不可欠となるに違いない。

 経営者や上級管理者は、デジタルデータを活用し、綺麗な報告書や企画書を作成することは期待されていない。24時間365日観察・思考の積み重ねを続け、人や組織を動かす事業や戦略のコンセプトを、極論すればポンチ絵かひと言で表現することが期待され果たすべき役割である。

 

おわりに

 一昔前にカラオケ好きが集まる居酒屋で、大先輩が歌うカラオケ「演歌」を聞きながら、楽譜通りに正確に歌っても味わい深い「演歌」にならないことに気づいた。考えてみれば、日本や世界の民謡などでは楽譜がなく師匠さんから聞いて憶えて伝統を伝えている。また、伝統芸や工芸では徒弟制度による「暗黙知」の伝承を大事にしている。

 AIに加えてアナログ観察や思考の習慣を持てば「鬼に金棒」ではないか。そのためには、「五感を研ぎ澄まし」、「あれっ」という違和感をベースに考え続けたい。

 

 

 

元青森中央学院大学教授

塩谷未知 

 

 

 

 なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

 

 関連情報

 

 

JRS経営情報(PDFサンプル)

 

 

 

 

情報番号

 

 

◆ AIとは何か?

20190032

 

 

◆ 電話やSNSの活用法を考え、関係構築に活かす

20260206

 

 

◆ 人事管理の役割と課題

20200544

 

 

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