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No.284 JRS メール配信サービス(2023.12.22)

JRSメール配信サービス発行

 

 

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最近では、会社や社会で起こる問題や事象が複雑化し、従来からの文系、理系だけの知識では解決が難しく、両方を集めた「総合知」が求められていると言われています。 

多くの人員を抱えていない中小企業にとっては、チームによる「総合知」はなかなか難しく、文理両方を併せ持った人材を育成することが必要となるのではないでしょうか。

そこで今回のメルマガは、「多様な視点を持つ総合知の鍛え方」というテーマで、文系・理系を併せ持った総合知の身につけ方について、コンサル経験豊富な元青森中央学院大学教授の塩谷未知氏に解説していただきます。

 

 

 

多様な視点を持つ総合知の鍛え方

 

 

 

複雑な要因が絡み合った社会的および会社内の課題の解決には、文理を含めた多面的な視点からの検討がますます必要になっている。一方、日本の教育や受験現場では、理科系、文科系に早い時期から分けられ、指定された受験科目だけを集中して学習する。文科系とラベリングされたら、数学や理科の学習は高校卒業の目指したいレベルに達しないうちに終わってしまう。理科系を選ぶとその逆の結果となる。

最近、問題の抽出や課題設定とその解決に、理科系と文科系の知識と知恵を総動員すべきという「総合知」という考え方が、世の中の一部では話題になっている。

例えば数々の生活習慣病を引き起こす肥満対策を考えてみよう。

理科系というか自然科学系のアプローチとして、栄養学や医学的な視点がまず思い浮かぶ。しかし、肥満に至る生活習慣を生み出す心理的要因については文科系の人文科学の心理学が役立つに違いない。栄養バランスの崩れたジャンクフードで空腹を満たすという貧困が肥満の背景にあることも想定される。すると、文科系の社会科学の経済学や政治学、法学の登場が必要になってくるわけだ。

肥満解消には「甘いものは食べない」、「間食はしない」、そして「毎日体重測定」などの自然科学の一つである生物学の応用である、栄養学や医学的アプローチだけでは限界があるわけだ。

 

新型コロナウイルス感染症対策を振り返る-自然科学、社会科学、人文科学の視点

 私たちを2020年春から4年にわたって苦しめている、新型コロナウイルス感染症について振り返ってみるのは総合知について考える上で適切な生々しい実例となろう。

 感染拡大や感染者の対策については、自然科学の医学および関連分野からのアプローチが直接的には有効であった。感染しているかどうかのPCR検査や抗原抗体検査、陽性者の隔離と治療、感染拡大や収束の予測には統計学が役立ったに違いない。

 一方で社会や経済を回すには、社会科学の経済学やその仕組みを考える政治学的な視点が必要となっていた。治療や隔離という医療の仕組みをパンデミック緊急事態に適応させるためには医学だけでなく、法学などの社会科学的な知恵を総動員する必要があった。

 一方、感染初期の頃に行政から呼びかけられた「ステイホーム(Stay Home)」の実行には、法的な縛りは役立つが、人々との心理的な信頼や共感という人文科学の心理学的な側面への配慮が必要だったと想定される。また、初期の頃に誰しもが思った「地域や職場で最初にかかりたくない」ということ、感染者や濃厚接触者への社会的な苛め・排除・分断には、社会科学や人文科学からのアプローチが必要だったと思われる。

 現実には、高度な意思決定をするリーダーが自然科学、社会科学、そして人文科学の専門家の意見や提案を「総合知」を持って理解していたようには思えなかった。そのこととあいまって、リーダー、専門家、そして一般人の間に信頼感が醸成されず不信感が高まったのは反省すべきことだろう。

 思いの外、役立ったといっては申し訳ないが、歴史学者の見識と提案が優れていた。それは100年ほど前のスペイン風邪というパンデミックの流行とその後の経過、なぜか3年ほどで収束したという歴史的事実である。

 

モノ/コト・シクミ・ココロの視点

 会社内の課題解決には会社を構成している大きな構成要素であるモノ/コト(プロダクト、製品やサービス)という視点、シクミ(プロセス、組織や仕組み)、ココロ(企業文化、社風)という3つの視点からの総合知が役立つ。

 会社の課題をこれら3つの視点を絡めて総合的な視点から考えるのである。ややこじつけになるが、モノ/コトは技術やハード、製品やサービスそのもので自然科学的な性質がある。同じようにシクミは社会学的、ココロは人文科学的な視点となる。

 いささか強引だが、新型コロナウイルス感染症対策の振り返りに、自然科学・社会科学・人文科学的な見方をしたが、会社の課題解決には平易な言葉のモノ/コト、シクミ、ココロの視点が役立つ。

 単純化し過ぎるかもしれないが、例えば、「新入社員採用者をどう増やすか」という今日的課題。魅力あるモノ/コトの開発や見せ方の工夫、人が育つシクミ、先輩が後輩を育てるよき社風をココロという具合に考えるわけだ。その中で、最も有効になる施策を組み合わせて採用するのである。

 

日々の鍛え方

 多くの普通のビジネス人は10歳代の半ばから受験のために、文科系か理科系人間として生きてきている。その結果、総合知を発揮する知識が欠落しているのは事実である。かと言って今さら、それまでの非専門分野の専門家になれるわけではないので、大まかな知識と専門家の相場観や土地勘を少しだけ拝借するのがよさそうだ。

 日々の鍛え方として有効なのは、総合的な新聞や雑誌だろう。自分の関心があろうとなかろうと1紙・誌だけでも全ページを読み込むのである。これは強制的にやらないと不得意分野はつい読み飛ばしてしまう。その結果、何紙・誌に目を通そうと馴染のある同じような記事しか読んでいないことになってしまう。

 分からない言葉はネットで調べる、そうやって馴染の無い分野においても理解できる語彙を増やし、自分が理解できる範囲を自然科学、社会科学、人文科学、モノ/コト、シクミ、ココロに広げる。そうなることで、多様な専門家との会話も弾み、自分の不得意な専門分野において借り物かもしれないが無いよりマシの相場観や土地勘が身につく。

 

おわりに

 10歳代理科系と文科系に峻別し、偏った専門家として生きてゆく、スポーツでも10歳代の前半で得意スポーツを決めてしまい、全身のバランスよい成長が損なわれているようだ。

 社会が成熟し、会社も成熟し、成長や売り上げ拡大に解決を任せる時代はすでに終わって久しい。これからの課題解決には社会も会社も、個人や組織の「総合知」が必要になっているのは事実である。

 

 

 

株式会社アイベックス・ネットワーク 委嘱コンサルタント(元青森中央学院大学 教授)

塩谷未知 

 

 

 

なお、「JRS経営情報」の次のコンテンツもご参考にしてください。

 

 

 

関連情報

 

 

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